最近の携帯、スマートフォンは凄い。多機能というのにも魅力を感じるし、カバーの可愛くて種類も多いのにも感銘を受けた。わたし的にはウサギのカバーが好きだ。そして一番驚いたのは、カメラのシャッター音が聞こえないということだった。従来の携帯はパシャリなど色々な種類のシャッター音が携帯に組み込まれていたのに。同じクラスの、しかも隣の席の、学校で一番近い存在の、浜野海士がそのシャッター音が鳴らないのを上手く利用し電車内で盗撮していた。制服が可愛い女子高校生のスカートの中を浜野は盗撮を繰り返していた。あの浜野が、盗撮?とうさつトウサツ盗撮。頭の中は盗撮という文字が一杯でパンクしそうだ。クラスではムードメーカー的な存在で、サッカーしてるときはめちゃくちゃ恰好良くて、みんなに優しいあの浜野が。


「は、浜野。」
「・・・あちゃー、」


浜野は困った顔をしてでも優しい笑顔を浮かべた。わたしが浜野に声をかけるまで浜野はわたしのことに気がついてなかったらしい。それはそうかもしれない、今日は休日だしわたしも浜野も私服だから。わたしはおつかいで大きなスーパーマーケットに行く予定でそこに行くための電車内で浜野の盗撮を目撃してしまった。


「降りよう。」
「え、わたし、次の駅で降りるから、」
「大丈夫、大丈夫!」


丁度電車が止まり、わたしは無理やり浜野に手をひかれ電車を降りた。近くにあった共同ベンチに腰をかける。浜野はわたしに見つかったことに対して何か弁解する様子も黙っていてほしいと言う様子も見えなかった。変わらない笑顔に、わたしはもしかしたらあれは幻覚だったのかもしれないと錯覚してしまう。


「ちゅーか俺のコレクション、見る?」
「・・・なに、それ。」


わたしの言葉を肯定という意味で汲み取ったらしく、浜野はスマートフォンを取り出し慣れた手つきで操作し始めた。一分もたたないうちに、浜野のスマートフォンの画面いっぱいには今まで盗撮してきた何百枚というパンツが映し出された。ご丁寧にスライドさせながら、このパンツは撮るのが難しかったとか、このパンツは超高価なブランドの物だとか、ことこまかに詳細を言い続ける。うっとわたしは胃の中の物が飛び出しそうになった。浜野が、こんな奴だったなんて。浜野は反省する様子もなく、昨日のサッカーの試合の感想を言うように少し興奮してわたしに話す浜野に幻滅した。


「さっき撮ったジョシコーセーの写真、すっごいぜ。」
「や、だ!」
「まーまー、そう言わずにさ。このハミ毛具合、どうよ!」


げらげらとお腹を抱えて笑う浜野。もしこれが普通の学校で話す内容の話題だったらわたしも一緒に笑ってたかもしれない、でも今の話題はそれとは大きくかけ離れている。いやでも目に入ってしまった写真、わたしは本当にあの時間電車に乗ったことを後悔した。それだったらこんな写真も、浜野のもう一つの一面も、見ずにすんだのに。もう、いやだ。


「なあ、このこと誰かにチクる気?」
「誰にも言わない、よ。」


一気に浜野は真剣な顔つきになった。ちゅーか俺の趣味を奪うことすんなよな、真顔でそう言う浜野にわたしはただただ首を縦に振ることしか出来なかった。言わないから、言わないから、もう浜野から解放してほしい。それ以外の考えはわたしの頭では働いていなかった。


「ま、チクったらお前のパンツ写真流出〜的な?」
「っな、!」


いつの間にか撮られていた、わたしのパンツ。浜野のスマートフォンの画面には今日わたしが穿いているパンツが映し出されていた。そんな、なんで。いつわたしは浜野に撮られていたんだろう。笑顔でスマートフォンを揺らす浜野は恐怖の対象だった。しね、しね、しねしねしねしね!









20111212
一人で勝手にスマートフォン祭り
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -