正直言ってこの人はあまり好きになれるタイプじゃなかった。デイダラのように明るくなく、イタチのように時折優しい瞳になるわけじゃない。冷たい瞳で、何を考えてるかわからない人だった。デイダラはこの姿は本来の姿ではないと言っていたけど、本来の姿でもこの人は冷たい人に感じるだろうと思った。今回の任務でサソリとペアを組むと聞いた時は、心底リーダーを怨んだ。どうして、いつもこの人は、デイダラと組んでるじゃない。

だから、私は、嫌だった。
任務は思った以上にすいすいと遂行出来た。この人の能力は底しれない、あんな所から毒針が発射された時は驚いた。ほとんどの敵はこの人が片付けていたと思う。私が三人敵を倒しているうち、この人は敵を三十人は倒していた。その強さに感銘を受けたが、それも一瞬だった。敵を倒し終えると本来のサソリが、私が今まで見ていたサソリ(ヒルコというらしい)から出てきた。息がとまるくらい美少年で少し見惚れる、本来の姿はしわくちゃのおじさんだと思っていたから。でもそれも一瞬だった。サソリは血まみれで倒れている敵を食べたのだ。びちゃびちゃと血が滴り落ちる。ぬちゃぬちゃと肉片と歯が擦れる音。なに、この人。サソリは私に構わずソレを食べ続けた。美味しそうも不味そうもなく、ただ普通に。アジトではこの人が食事を摂っているのを見た事がなかった、人傀儡だから仕方のない事なんだろうと思っていたが、まさか人肉を食べているから?気持ち悪い。キチガイ染みたサソリの行動に私は立ち尽くすだけだった。


「 おい、」
「な、に。」
「 お前も食えよ。」
「やだ、っ!」
「食え。」


どっと冷や汗が背中に伝った。サソリの殺気が私を蝕む。食べなきゃ、殺される。私とサソリの実力の差は歴然だった。私だって命は惜しい、この人に歯向かうなんて無謀なことは出来なかった。ゆっくりと食べられているソレの近くに座った、出来るだけサソリの遠くに。震える腕をおさえてソレの右腕をもぎ取った。死体を見るのは慣れてるのに、…こんなグロテスクだったっけ?死因を見る限りは私が殺した。サソリが殺した敵は全て毒を使ってる、それを食べろと言われたら私も敵と同じく毒が回って死んでいただろう。不幸中の幸い、といったところか。


「お前はこっちだ。」


サソリは私が持っていたソレの右腕を奪い取り、ソレの眼球を私に与えた。ぎょろりと気持ち悪くぶよぶよした目は私を見ている、死んでるくせに。サソリは意地悪く笑った。私はこれを食べる気なんてしなかった、こんな物を口に入れるのを想像するだけで吐きそう。


「二度言わすな、さっさと食え。」


私は数秒後、頬の鈍い痛みで殴られた事に気がついた。光の速さのように感じられた、攻撃される前に気づかないなんて。口の中は鉄の味しかしない。血は止まることなくどくどくと流れ続ける。痛い、痛い。もしこれを食べなければ私はこの人に嬲り殺される…!拷問好きのサソリのことだ、想像以上の拷問を私に与え続けるだろう。意を決して私は眼球を口に含んだ。ほんのり温かくて気持ち悪い。血の味で麻痺してる間に飲み込まなければ。思った以上に大きかった眼球は噛まなければ飲み込めない大きさだった。ずちゃずちゃ、ねばねばした液体が溢れだす。ぬるぬると口内を動き回るソレ。味なんか知りたくないのに、苦くて美味しいとはかけ離れてる味に吐き気を催した。多分、吐きだしたりしたらサソリは怒ってまた何かするだろう。吐くのは、駄目。飲み込まないと。ソレを飲み込むと一気に鳥肌が立った。私、食べちゃった、他人の眼球。サソリは笑った、それはとても冷たく。


20111028
破滅は確定
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