例えるなら、そう。彼女は椅子。生活する中で重要視される椅子、私達学生にとってはなくてはならないもの。授業を真面目に受けるのには必要だ。人間を支えるためにも椅子は必要だ、彼女が彼の心を支えるように。椅子の相棒…机は、彼を例えるとそうなるのだろう。机と椅子は二つで一つ、ワンセット。彼等も二人で一人、ワンセット。椅子がない机は何となく物足りなく見える、彼等もどっちか一人欠けると物足りなく見えてしまう。それぐらい二人は、一緒にいて、たくさんの時間を共有し分かち合っている。これは仕方のないことなのだ、そう仕方のないこと。私が泣き喚いても何をしたって、この事実が覆される事なんて一生こないだろう。


「お前それでいいん?」
「いいねん。机と椅子の仲を引き裂くなんてあほなことする奴おらんやろ。」
「じゃあ俺今から机と椅子に割り込んでくるわ。」
「ちょっ、けんや!」


がたん、勢いよく私の前の席に座っていた謙也が立ち上がる。イスがぎしりと鈍い音をたてた。ほら、やめとき謙也。


「白石!今日の部活の事何やけどな…、」
「わるい、謙也。後にしてくれへんか?俺ちょっとコイツの用事付き合うから。」


ほらね、やっぱり。机こと白石くんは爽やかな笑顔をこぼして、椅子こと白石くんの彼女の用事に付き合うため教室からいなくなった。白石くんは彼女のことになると優しくて綺麗な笑顔になる。彼女もまた白石くんのことになると優しくて可愛い笑顔になる。お似合いカップル。彼女にジェラシーが湧かない、なんてない。彼女は白石くんが惹かれたのも分かるほど優しくて可愛いくて、でもたまに男前な一面もあって。それは私が思い描いていた理想の女の子像で。結局私は椅子になれないブッタイなのだ。


「俺はお前のこと消しゴムに例えられると思うで。」
「 なんで、消しゴムなん?」
「字まちごうた時必要になるのは消しゴムやろ、椅子なんかじゃ消されへん。」
「なんやのそれ、」
「俺めっちゃ消しゴム好きやから色んな種類集めてるし、消しゴム見るたびにワクワクすんねん。」
「だから、なんやの、」
「この教室の中で魅力ある物って、椅子でも机でもない…消しゴムや。」


俺お前の事好きやねん。つり目がちの謙也の瞳ががっちりと私を離さない。その台詞が白石くんから発せられたらと考えてしまっている私。謙也に告白されているのに、私の脳内は白石くん一色で。何とも言えない感情がお腹の中で渦巻いていた。






20110726
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