「ほんとサソリって自己中ね。」
「動物はみんなそうだろ。」


私が嫌味っぽく呟いても何ともないといった表情でサソリも呟く。動物、か。人傀儡も動物に分類されてるのかなあ。人、って文字がついてるんだからそれも頷ける。変わらない端正な横顔が、酷く懐かしくて悲しかった。


「ほら、昔よく遊んでた子いるじゃない?私の家の隣に住んでて泣き虫だった男の子!」
「忘れた。」

「その子が最近殉職しちゃってさあ。」
「興味ねえ。」

「悲しくないの?」
「別に。」


サソリの体はあの頃で止まっているのに彼の海馬はもうあの頃の記憶をデリートしているのか。人間が、動物が、年を重ねるたびに記憶が薄くなるのは仕方がない。それには何の寂しさとか感じないのに、サソリが昔の記憶を覚えてないとどうしてこんなにも寂しく感じるのか。結局殉職した彼は、サソリにとっては興味のない人間としてインプットされ消えていったのだろう。じゃあ私はサソリにとって何だろう。


「サソリは永久的に生き続けるんでしょ?」
「あぁ。」

「じゃあ、忘れないでよ。」
「私が存在していたことを、」
「私との思い出を、」
「頭の片隅で良いから、お願い、よ。」


サソリは決して頷くことはなく、ただ私を見つめていた。パッとサソリの顔がサソリの髪同様に真っ赤に染まった。たらり、大量のアカがサソリの髪から顔から滴り落ちる。そのアカは私の返り血だということはすぐに気がついた。こんな綺麗な血が私の体内で駆け巡っていたことに少し誇りを感じた。





「どう、してっ。にんげ、んをやめ、たの、」


20110523
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