嫉妬は万国共通、なんて誰が言ったんだろうか。ティキのジャケットを抱きしめる形ですうっと匂いを嗅いだ。頭が痛くなるような濃くキツイ女物の香水の匂い。もちろん私の匂いではないし、嗅ぎ慣れたティキの匂いでもない。あぁ、これは私の知らない女の匂い。


「随分と疑り深いんだな。」
「別に。」


ティキに向かって異臭が鼻につくジャケットを放り投げた。ティキは苦笑を浮かべてポールハンガーにそのジャケットを掛けた。私だってこんなトゲトゲしくティキに接したくない。ティキと会うのもかれこれ数ヶ月振りだと思う。ティキは仕事の事とか自分の事とか多くは語らない、ふらふらっと出かけていってそしてひょっこり戻ってくる。そんなティキを受け入れたのだから私は何も言わないし聞こうともしない。ティキはそこを気に入ってるのだろうか私の所に戻ってくる。


「不細工になって。」
「無茶言うなよ。」


ティキが微笑むとパッと仄暗い私の部屋が明るくなった。蝶々のような人だった。きれいな花に目移りして沢山の花に囲まれて甘い蜜を吸う。きれいな蝶々はきれいな花を呼ぶ、汚い蝶々は一人ぼっち。もしティキが不細工だったら綺麗な人は寄って来ないだろうに。そしたら女、花は、私だけなのに。ティキが思ってる以上に私は嫉妬女なんだよ。


本当はティキにあっさりと捨てられるのを望んでるのかもしれない。いつ帰ってくるか分からない不安。いつも私の背後に付きまとう恐怖。ティキがいない生活に慣れた頃に限って戻ってくる。なにもなかったように笑って私を出迎える。ずるい、ティキはずるい。私からティキを断ち切れば良いれど、やっぱり断ち切れないのは彼を欲しているから。蝶々と同時にティキは花にも例えられた。一度蜜を吸ったらもう他の蜜なんか吸えない。魅惑の蜜を持つ花。それじゃあ私はその花に群がるモンシロチョウかな。アゲハチョウには到底敵わない蝶々。ゆらゆらゆら、ティキさん今日はその蜜吸っても良いですか?





朝になるとベットの中は私一人だった。ひんやりとして私以外に誰か寝てたなんて分からないそんな冷たさ。寂しいなぁ、布団の中は冷たいけどティキの匂いが一杯だった。あの香水の匂いは微塵もなくて、私の知ってるティキの匂いしか残ってなかった。それだけで幸せを感じる、どうせ明日になればこの匂いは消えちゃうだろうけど。今日からまたティキを待つ日々に戻るだろう、あぁ又匂いをつけてティキが戻ってきたらどうしよう。はあっと憂鬱が溜息となって私の体内から出ていった。


企画13番目の憂鬱さま提出作品
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テーマ「人外ファンタジー」
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