見た目はひょろっこしくて。もしかして私でも勝てるんじゃないか?って思わせるぐらい暁の中で弱そうに見えるデイダラは敵と戦闘する時は異常なくらい頼もしく見えた。広くも大きくも無いその背中を見つめると猛獣のようなオーラが覆っていた、やっぱり彼の屈強な精神が溢れているのだろうか。


「デイダラの背中ってたまに逞しく見える。」
「いつも逞しいに決まってんだろ、うん。」

「多分デイダラの事が、すき。」
「オイラもお前の事が多分好き。」



人間はそう簡単に死なないと信じていた、信じざるをえなかった。人がたくさん呆気なく死んでいく様を何度も見ていた、簡単に死んでしまう事を知っていた私なのに。身内に近い人の訃報を聞くと私は狂ったように泣いた。分かっていた、こんな日が訪れる事は自分でも重々承知してきたはずなのに。泣くまいと堪えても私の瞳からは音もなく涙が次々溢れていた。





年を重ねた。どれぐらい?とっても。私の海馬はあの日から止まったようで思い出すのはデイダラがすぐ傍にいた頃の事しか思い出せなかった。それでも私の脳は体は老化した様で、たまに、ごくたまにデイダラとの思い出が思い出せなくなっていた。楽しくて幸せだった過去は今の私には遠すぎて、記憶を蘇らす事が出来なくなった今の自分が恐ろしかった。ごめんなさい、私が覚えてなくちゃデイダラが拗ねちゃうでしょ?今日はデイダラの誕生日だから重い事は考えないでパーっと久しぶりに馬鹿騒ぎしないと。もう少し年を重ねたらデイダラの誕生日すら思い出せなくなってしまったらどうしよう、そんな考えが頭をよぎると泣きそうになった。


「お前すげぇ老けたな、うん。」


今日こそは涙を流さまいと乾かすように顔を上げると、変わらない愛しい顔が私の真正面に存在していた。開いた口塞がらない、むしろ開いた目が閉じなかった。これは私が生んだ幻?それとも誰かが私を驚かす為に変化したの?ああでもやっぱり私がデイダラを見間違うはずなんてない、この人はデイダラ?存在するはずのないデイダラが又私の前に現れた事に嬉しくて、幻なんかで存在を否定したくないっていう気持ちが強いかもしれない。


「言っとくけどオイラ本物だからな。」
「…ゆうれい?」
「そんな感じ。やっぱお前誕生日覚えてたんだな!このばくだん美味そー、うん!」


馬鹿な事を聞くなとそんな顔をしてデイダラは私がテーブルの上に並べていた料理にキラキラした瞳で眺めていた。そういえば幽霊って食べれるの?意外と冷静になれるものだ。


「あっちは楽しい?」
「まあまあかな、うん。」


パクパクとたくさんの食べ物がデイダラの口の中に入っていく。幽霊も普通にご飯を食べるのか。普通に食べてる様子を見ていると昔に戻った気がした。昔はこうやって二人でご飯食べたっけ。
デイダラからあっちの世界の話を聞いていると少なからず楽しくやっているようだ。やっぱり生きている世界が違うと痛感させられる。嫉妬、してるのか。デイダラに?私を置いて逝ってしまったくせに楽しそうに過ごしているから?初めて腹の底から出てくるモヤモヤした気持ちに何故か泣きたくなった。


「お前は楽しいのかよ、うん?」
「まあまあかな。」

うそウソ嘘、大きな見栄を張ったって意味はないけど。デイダラがいないと楽しくないよ、なんて困らせてしまうだけでしょう?久しぶりに会ったんだからデイダラは笑っていてほしい。


「オイラのさっきの言葉撤回。」
「…え?」
「お前がいないと楽しくない。」


デイダラは持っていたナイフとフォークをテーブルに置いてハッキリとした口調で言い放った。


「帰る。ずっと此処にいたらお前の事殺してでもあっちに連れて行っちまいそうだからな、うん。」


優しくはにかんだデイダラは私の頭を撫でた。じゃあ連れていってよお願い、デイダラは私の言葉は聞き入れてはくれない。すきスキ好き、ずっと一緒にいたい。


「多分デイダラの事が、ずっとずっと、すき。」
「オイラもお前の事が多分一生好き。」


多分?ううん、絶対。素直じゃない私達はいつもそう、二人だけの暗号。多分は絶対。辛そうに笑うデイダラを見ると私がこっちの世界に連れ戻したくなった。もしかしたらこのままデイダラはいてくれるのかもしれない。無情にもあっさりと私の淡い期待は崩された、だんだん半透明になっていくデイダラが目の前にいる。


優しく抱きしめてくれた。懐かしい、デイダラの匂い。でもすぐに私に背中を向けた、泣いてる顔私に見せたくないの?デイダラに負けじと私も涙を堪えてデイダラの背中をただただ見つめていた。






いつの日か見たあの逞しい背中はもう見る事は出来ないだろう。


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