「ちょっと寄り道していい?」
「別にいいけどよどこ行くんだ?」
「本屋さん」
「了解、その後マジバな」
部活後は二人だけの時間。
私より遥かに身長が高い火神くんはその分一歩が大きいはずなのに私に合わせて歩いてくれる。見える景色は違うけどおなじスピードで隣で並んで歩くだけで火神くんの特別な存在だって自覚するようで誇らしいような照れ臭いような、触れそうで触れない手の距離がなんだかむず痒いけどそれが心地よかったりする。

「つーかお前本とか読むんだな、意外だぜ」
「失礼な!まあ、本は全然読みませんけどー」
「フハッ!だよな」
ムキになって返せば大きな手で頭をクシャッと撫でてくる。いつも髪型が崩れるからやめてって言ってるのに、学習しないところはさすがバ火神と言うべきか、でも頭を撫でられるのだって嫌いじゃない。
「まあ本屋さんに行く目的は雑誌なんだけどね」
「雑誌?」
「そ、月バスの今回の特集のウインターカップの記事に誠凛が載ってるらしいよ」
「え、マジかよ!俺知らなかったんだけど」
本当に驚いた様子の火神くん。いや、あんだけ小金井先輩を筆頭に騒いでたのに気付いてないとかそっちの方が驚きなんだけど、まあ火神くんは集中すると周りの声が聞こえてないらしいからそんだけ集中してるってことで結構結構。さすがバスケ馬鹿。
「じゃあ買ったら一緒に見よっか」
「おう、サンキュー」

いつも通りの道を大好きな人と肩を並べて歩いて一緒に寄り道してなに一つ変わったとこなんてないけれど私にとってはこの日常はどんなものにも変え難いキラキラと光る愛おしい日々だ。

すこやかでいとしい毎日

慈愛とうつつ様に提出。
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