nail!
このお話ではお好きな色のマニキュアをマットにプレゼントしてもらえます♪
*name change*
にこりと微笑み、持ち上げた手元にコーティングされた小さくて可愛い紙袋をぶら下げ、マットが言った。
「ナナにプレゼント。」
「?」
礼を言って受け取り、中を見てみると…赤のマニキュアが入っていた。
「可愛い!」
さすが、私の好みをばっちり分かってる!
選んできてくれたなんて、嬉しすぎる。
「ありがとう〜〜大切にする!」
とびきりの笑顔でお礼を重ね、すぐさま近くの椅子に座る。
「早速使ってもいい?」
「勿論!」
うきうきとした気持ちの波に乗って、キャップを開ける。
独特のつんとした匂いが広がる。
明日はマットとデートだから、指先までお洒落しちゃうぞ。
真剣…
集中…
無言…
横でテレビゲームをしているマットを放置して、ひたすら筆先と爪を見続ける。
「よし!!」
無事に塗り終えた!
あとは、乾くまで少し休憩♪
でも何も準備してなかったから…
「マット…ごめん…何か飲み物が欲しいなー、なんて。」
「ナナ…」
「ごめんねってば!嬉しくてすぐ塗りたかったんだもん。」
「はぁー。まったく。優しいマット君にお任せあれ。」
わざとらしくため息をついた後に、ニッ!と笑ってマットが部屋を出て行く。
いつもだったらもっと面倒がるのに、思った以上にスムーズに取りに行ってくれた。
プレゼントを突然くれたり、面倒見よくしてくれたり、珍しいこともあるもんだなぁ。
そんなことを考えているうちに紅茶と、クッキーを持ってマットが戻ってきた。
「クッキーまでありがとう!気が利くーっさすが優しいマット君!」
「よし、今の気持ちを忘れるなよ?」
冗談めかした会話をしながらマットも隣に座り、二人でティータイム…
半乾きのマニキュアがどこかにぶつかったりしないよう、手を慎重に動かしながらカップを取る。
クッキーも食べたいけど、粉が指先につくしちょっと難しいかなぁ。
迷うように見つめていると、マットが「食べさせてやろっか?」と気がつく。
「今日本当に気が利くね、どうしたの!?」
「やる時はやるのだよ!」
「いつもそうしてよっ」
「はい、ナナちゃん。あーーん」
「あーーん」
あぁ、甘い。幸せ。
少し照れながら唇でクッキーを受け取り、器用に食べ進める。
「ナナ、口の周りに粉ついちゃってるよ。」
「えっ!」
お恥ずかしい。私は慌てて、肩のあたりで粉を払おうと顔を傾ける。
「ちょっと待って。」
マットが指先で私の頬を抑えると、丁寧に粉を払ってくれる。
包み込むような大きい手、男らしい指から温もりが肌に伝わりドキドキする。
「…ありがと。」
「よし、じゃお礼のチューして?」
「はぁ!?」
「はぁ!?じゃないよ…!俺こんなにナナに優しくしてるんだからいいだろ?」
う…確かに…
でもそんなストレートにねだられるとハードルが上がるというか、余計に恥ずかしいというか…。
「ふふふ…では俺の方から…」
「わっ、ちょっ」
慌てて抵抗しようとした私の手首をすかさず捕らえたマットが言う。
「俺の服にマニキュアついちゃうだろ。」
「あ…ごめん。」
何か…分かってきた気がする…こやつの魂胆。
手首を抑えたままのマットが顔をぐぐぐぐと近づけてくる。
「ちょおおっと!タイム!待った!!」
「待たない。」
「待ってってば!」
冷静になろう。
普段はふざけているマットだけど、私の意思に反することを強制したりはしない。
寸止めだな。
恥ずかしいけれど、寸止めで私をからかう気だ。ならばーーー
「?」
急に大人しくなる私を見て、マットが一瞬たじろぐ。
そうそう、君が紳士だということを私は知ってるわよ。
そう思ったのもつかの間、「ちゅっ」と小さな音を立ててマットが唇にキスをした。
「!?!?」
赤くなって話せないでいる私を横目に、
「俺もやる時はやるのだよ。」
と再びマットが宣言する。
全てはこの為だったのか、と思うと悔しさ半分、照れ半分。
明日はうんと振り回してやろう、と心に誓いつつ、最初の「やる時はやるのだよ」に返した「いつもそうしてよっ」は撤回だな、と思った。
*end*