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あまのじゃく
このお話ではお好きな色のマニキュアを

メロにプレゼントしてもらえます♪

name change



別に、悪気があった訳じゃない。

だから全てを自分のせいにされるのは納得いかない。


…しかし、認めたくはないが。

どう考えても自分が悪い。

「はぁ…」

心臓にかかった負荷を解放するようにため息を吐く。

きっかけはくだらない、化粧品…マニキュア。
あいつがあまりに機嫌よく塗っているので、思わず口が滑った。

「用事か?」

「ん?ううん、オシャレ!どうかな?」

「キョーミない。」

「…そうですかーっと。」

"用事もないのに何を突然洒落込んでいるのか、あまり目立つことをすると他の奴らがいちいち声をかけるしやめておけばいいものを。"

とは言うまい。

しかしあまりいい気がしないので興味のないように振る舞う。
ナナは表情に少し不満の色を滲ませたが、マイペースに作業を進めた。

自分の行動に効果がないと思うと余計なことを言いたくなるのが人間の性だ。

「そんなとこに色がついていようといまいと大差ないだろ。」

お前自身既に魅力的なんだからという意味…

に受け取る奴は相当ポジティブだな。言い訳としても無理がある。

ナナは「はあ!?」とあからさまに不機嫌な声を出し、作業の手が一旦止まる。

こじれるような言い方をした自覚はあるが、気に入らないものは仕方がない。

「女の子のオシャレは自分の為にやるんだからほっといて!」

ナナと一緒にいるようになってから、"プリプリ"という表現を理解できるようになった。
短気なナナは些細なきっかけで気分を害し、文字通りプリプリと怒り出す。
少し膨らんだように見える頬に尖った唇。言葉を堪えた不機嫌な瞳が、爪とマニキュア瓶の往復を再開する。

今思えば短気は自分の方だ、余計な言葉で追撃してしまった。
ナナのことになると計算が狂う。

「そんなことに割かずに、時間を有意義に使えよ。」

つまり、こっちに来てその愛しい顔を見せてくれという意味…

に受け取る奴はまずいないだろう。
制御の効かない自分に苛立つ。
このままでは良くない、と思った時だった。

「…ひどい。」

やや乱暴にマニキュア瓶のキャップを閉め顔と目を赤くしたナナが立ち上がる。

「メロなら可愛いって言ってくれると思ったのに…!」

吐き捨てるように言ったナナが部屋から出て行く。
バタン!と強く閉まるドアの音。
あぁこれはマットに余計なことを聞かれるな、と思う。

退屈で余計なことに見えた作業が、自分の為だと分かると、どうしようもなく愛しくなる。

くだらない嫉妬と、化粧品にすら自分とナナの時間を邪魔されたくなくて不機嫌になってしまったこと。

みっともなくて口にはできない。
額を抑えながらベッドに腰掛ける。

どうあいつの機嫌を取りに行くか。

*

深夜、静かにナナの部屋に入ると、窓際のベッドで、上の方まで掛けられた布団が静かに上下していた。

ベッド近くのミニテーブルに音を立てぬよう慎重にボトルを置く。

恥を忍んで店で買ってきた。
カラフルな色が並ぶ中、ナナが好みそうな赤のマニキュア、細いリボンをつけてもらって。
店員の女が「プレゼントですか?」と余計なことを聞いてくる。それ以外でリボンをつける奴なんているか。ほっといてくれ。

これで機嫌は直るだろうか。
直らなければ困る。
これ以上のことはできそうにない。

ゴソゴソと布団の擦れる音がなり、ナナが寝返りをする。
久しぶりに心臓がばくばくと鳴った。

気の抜けた寝顔は特別美しくもないが、他の奴らには絶対に見せたくないと思う。

起こさないようそっと頬にキスすると、くすぐったかったのか「ふふ…」と笑い、手で払われた。

手で払われてもいい。目に涙を溜めているよりずっと。
いつまで経っても悔しさと上手く付き合えない俺の側で、どうか笑っていて欲しい。
幸せそうな、全てがうまくいくように感じさせる特別な笑顔で。特別なナナに。

起こして縋るように抱きしめたいのを堪え、部屋を後にした。

*

開けられたカーテンから差し込む光が眩しく目を覚ます。

部屋に妙な匂いが充満していると気がつく。なんだこれは。

「メロ!」

ベッドの下からひょこっとナナが顔をあらわす。

「…プレゼント、ありがとう!メロだよね?」

「あぁ。」

認めるのは気恥ずかしいが、はぐらかしても仕方がない。

「ありがとう〜〜!!嬉しい!見てこれ!どう?どうどうどう?」

プリプリから一転、些細なことでウキウキもするナナが幸せいっぱいのあの笑顔で爪を見せてくる。

早速使われたプレゼントのマニキュア。

「…おう。」

素直に褒めるのは癪なので興味なさそうに返す。

「いいでしょ?お揃いだからねっ!」

「ぁ?」

ナナに持ち上げられた自分の手を見ると爪が同じマニキュアで塗られている。

「お前…これ!」

「指先に色がついていてもいなくても大差ないんでしょ?どうよ!」

勝ち誇った顔でこちらを見下ろすナナに言い返す言葉が出ない。

出たとしてもろくな言葉にならないから、ここは黙っておくのが正解だろう。
まだしばらくは仕返しされそうで面倒臭い。

首を鳴らして起きる準備をする。

もう少しゆっくり目覚めたかったが…

機嫌よく笑っているナナを見て、これもいいか、とついにやけた口元を隠した。

あまのじゃく
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