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I wish a Merry Christmas!!
「これと…これ!」

大型のスーパーマーケットに、メロと二人きりでお出かけ。

前日から興奮して寝られなかった

…というのは、メロに馬鹿にされるから内緒。

「予算を把握して手に取ってるのか…?」

「えっっよ さ ん…?」

「知らんふりをするな。30ポンドで抑えるって言ったのはナナだろ。」

「そんなこと言ったっけ…

しかし!今どれくらいカートに載せたか覚えてないし、こうなったら世界のL氏のカード使うってのはど

「25ポンド99ペンス。いま。」

「げっいちいち計算してたの!?」

「値段見ながらカートに乗せてんだから普通分かるだろ。」

いやいや…そんなきっちりとは分かりませんよ。

いや〜な視線を送りながらも、私は感心する。

ワタリを始め、ハウスではLもニアも莫大な財産を持っているし、メロだって報酬を沢山得ている。
それなのにお金を無駄使いしない、そういうしっかりしたところが大好き。

はにかんで顔をあげると、

「俺のもんが買えなくなるだろ。」

そう言いながらメロがドサリとチョコレートの箱をカートに追加するのを目撃。
前言撤回。

「あのねえ、今日はLのお誕生日準備の買い出しなの!」

「そもそもそれが気に入らない。角砂糖タワーニアに作らせとけば満足するだろ。」

「雰囲気が大切でしょ、雰囲気!さー、かぼちゃを探しに行きますよ!」

ちっと舌打ちする音が聞こえる。

まぁ…確かに。Lの誕生日を知っているのはごく一部の人間だけだし、お祝いらしいことをする訳ではないし。

けれど、我らのボスの為に少しばかり豪華にお菓子を作ってあげようと思うのだ。

「大体、俺はハロウィンより断然クリスマス派なんだよ。」

「…なにそれ、メロジョーク?」

「あん?」

「メロがクリスマス好きって、可愛いじゃん!?本当?」

茶化すように聞くと、メロが大きくため息をつく。

「あのな

「メロの誕生月だからでしょ?勿論、私にとっても大切な月だから分かってるってば。」

言いかけた言葉を飲み込んだメロが、少し恥ずかしそうに目線を斜めに投げる。

「その時はチョコたっぷりのブッシュドノエル作ってあげるよ!スイーツまでメロ向けだね、クリスマスは!」

「だろ?」

満足そうなメロを肩で軽く小突いて、買い物の続きに戻る。

*

「ぴったり30ポンド!天才!」

「…俺がな。」

ボソリとメロが漏らす。

「選ぶのがうまい私と、計算がうまいメロのコンビが天才ってことでいいじゃない!」

「最後の方値段に合わせてうまく選んだのは俺だぞ。」

「…。

さぁ!車に戻ろう!」

「…。」

ずんずん進むと、無言で後ろをついてくるメロ。調子に乗りすぎてイラっとされちゃったかな?多分、大丈夫。メロはそんなことでは怒らない。

「おい待て。」

「へっ?」

怒らない、と思ったけど見立てを間違えたか?

「えっ。やだやだ何!?待たないっ!」

せっかくのお買い物、浮かれすぎて言い合いになるなんて嫌だ。

「ナナっ」

手首を掴まれて、びくっとする。
お叱りを受けるのかと思い、恐る恐る振り向く。

「お前…調子に乗るから…」

「…はい…」

「かぼちゃ、重いんだろ。貸せ。」

言うなりメロが、私の手から持ち帰り用の袋を取り上げる。

うん、

そうそう、

そういえばかぼちゃが重かった。

ドキドキしていた胸をホッと撫で下ろす。

何だ、怒ってる訳じゃなかった。
言い合いになるどころか、ずっとずっと優しいメロの背中。面倒そうにしていたのに袋をぎゅっと握っている拳に胸が苦しい程ときめく。

ああ、その手。愛しいなぁ。

「手、繋ぎたかったぁ。」

荷物を持ってもらったのに、素敵なメロの手についついわがままがこぼれる。

「両手が塞がる程買い過ぎた罰だな。」

「ちぇーー!」

子どもみたいにごねる私に、メロは満足げな表情を浮かべる。
メロにはいつも、そんな風に不敵で楽しそうな顔をしていて欲しいなって思う。

*

車のシートにゆったりともたれながら、夕焼けを見つめる帰り道。

「あぁ、あっという間の1日だったなぁ。」

楽しい1日。名残惜しいな。

「飾り付けするんだろ?」

「疲れちゃったから明日にする。ハロウィン、子供達も喜んでくれるといいな。」

呟きながら、眠気に瞼が重くなる。

赤信号で止まった時、そっとメロが手を繋いでくれた。

ちゃんと、手を繋ぎたいと言ったことを覚えてくれてたんだ。

手の甲を親指で静かに撫でられ、うとうとが加速する。

「寝てろよ。」

「いやいや、起きてますよ…」

「静かな方が運転が捗る。」

「またまたぁ…」

笑いながら、メロのお言葉に甘える。
あぁ、とても幸福だ。
私ばかり幸せをもらってる。
…ちゃんと私からもお返しするからね。

*

「着いたぞ。」

「イテッ!」

おでこに走るぴりっとした痛み。

「もう少し優しく起こせませんかね?」

おでこをさすりながら文句を言うと、

「充分優しかっただろ。」

とメロが答える。

確かに。確かに優しかった。楽しかった。

車から降りたくないなぁ。
でもそろそろ、ハウスのお手伝いに戻る時間。

「メロ…1日すごく楽しかった。ありがとね。」

「?」

素直な私に、何だ?と言わんばかりの表情のメロ。

「クリスマスは、うんとサービスするからね!」

力を込めて宣言する。本気だよ。

「…プレゼントに期待だな。」

メロが挑発するようにこちらを向く。後ろから夕陽を浴びて、金髪の輪郭だけが眩しく光る。

「よし、私にリボンつけてプレゼントしてあげるよ!どう!?」

身を乗り出して聞けば、メロはまた、不敵で満足げな顔になる。

「ハードルが上がったな。」

「望むところだ!」

くすくす笑っていると、チョコレートの香りごとメロの顔が近付いてきて、私もそれに応えるようにあごを上げる。

とびきり甘いキスを交わして、車を降りる。

再度荷物を持ってくれたメロの後ろ姿を見ながら、頭の中で何度も、あのメロディーに乗せて繰り返し言葉が浮かんだ。

(I wish a Merry Christmas!!)
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