パズル
マットがパズルをくれた。知恵の輪みたいな、金具と金具がパーツで繋がっていて、それを外せたらクリアというスタイルのもの。
「えー、私こういうの苦手だもん。」
「大丈夫!ナナにちょうどいいくらいに仕上げたから。」
「えっこれマット製なの?」
「そうです。余ったパーツでナナちゃんにおもちゃを作ってあげました。」
「わーい♪
っておもちゃならニアにあげればいいのに。」
「ニアが受け取ると思うか?」
「…。受け取ってすぐ改造しそうだね(笑)」
「だろ?ナナならこのパズルといい勝負になるはずだ!」
「…ひどーい!」
かくして私はマットお手製のイケてる知恵の輪をいただき、ハウスの仕事が終わった後、リビングで早速やってみることにした。
カチャカチャ…カチ…
「違うなぁ。」
あ!
「こうかな!?」
ガチャガチ…
うーーーーんやっぱり難しい。。
同じように突っかかるばかりで全然できそうにない。
でもナナにちょうどいいなんて言われたら、悔しい。
さくっと解いてマットをギャフンと言わせたいのにーー。
そこに入浴後のメロがやってきた。
「またココア?」
「勿論。」
(お風呂上がりくらいさっぱりしたもの飲めばいいのに…)と思わなくもないが、メロにとってはきんきんに冷えたココアはさっぱりに入るらしい。
湯気と共にいい香りを立ち込めさせながらメロが近付いてくる。
「何だ?それ。」
「マットがくれた。私にちょうどいいとか言うんだよ。ひどくない?」
「はは…ノーコメントだな。」
「メロまでひどい。涙」
「見してみ。」
私は隣に座ったメロにパズルを渡す。
メロはくるりと一周させ観察すると、
「なるほどな。」
と呟く。
「分かったの!?」
「まーな。」
「すごーい。やっぱりメロ!」
メロは何言ってんだ、って表情をするけれど、嬉しさが滲む顔になるからたまらない。
まだ湿り気を帯びている金髪は、先が束になり少し濃く見えて色っぽい。
露出している腕や脇からいい匂いが広がってクラクラする。まさにフェロモン、と口にはできないことを思う。
「自分で解くんだろ?」
「そうよ!でもヒントだけちょうだい??」
「この部分でどうするか、だな。」
私にパズルを返しながら、一箇所を指差し教えてくれる。
「どれどれ…」
カチ…カチャカチャ
「うーん。。」
ガチャガチャ…
「うーーーん。。」
メロは横でクックッと声を抑えて笑っている。
「ちょぉっとーー!もうちょっとヒントちょうだいー?」
仕方ないな、という顔をしてメロがまた至近距離にくる。
「ここを、どっちかに動かしてみるとか。」
私の肩に、メロの髪先から滴が落ちる。
「よし!チャレンジ!」
ここを、どっちかに…?
うむむ、全然動かないじゃん。
マットは失敗作を作ったんじゃないの?とすら思えてくるけど、メロは解けてるんだからそうでもないのよね。
ガチャッ…ぐぐぐぐぐ…
「ねぇ、これ無理やり壊したらダメなんだよね?」
「あたりまえだろ。」
可笑しさに、メロから自然に笑みが漏れてる。素敵。
「ここを押さえるだろ、右手。で左手で…ここからだとやり辛いな、」
そう言うとメロはソファの上に立ち上がり、後ろの隙間に入り込んで、両手を操作できるよう私を包む形で座る。
「右手。ここを押さえるんだよ。で、左、」
私は言われるままに左手を出す。
メロは丁寧な手つきで私の手を取ると、「ここんとこ。」と教えてくれる。
ふむふむ。
ガチ…ン…
まだ引っかかる…。
メロのヒントはヒントに徹しすぎて、さっぱり答えにたどり着けない。
「もうちょい教えて?」
振り向けば息がかかるくらい近い。
「じゃお前ここ押さえてろ、で、ここを動かすだろ?すると…」
覗き込もうと顔を乗り出したメロが自然と私の肩に顎を乗せる。
金髪が私の腕をさらりとなぞった。
「で、これを」
「あ!上に引っ張ればいいのかな?」
カチッ
「わぁーっできたあ!」
「よくできました。」
「うわーいメロのおかげ!ありがとう〜。メロ教えるの上手だね!先生になればいいのに!」
「…ガラじゃないだろ。」
「そんなことないよ!
…メロみたいに努力した人は、教えるのが上手だもん。」
そう言って振り向けば、メロは少し意表を突かれた顔をして、
それから優しい目になり瞼にキスを落としてくれる。
「うぉい!ナナー解けたか!?」
突然リビングのドアが開き、マットが顔を出すも、二人の様子を見て
「うわ、アツ。」
と言ってすぐに出て行く。
「…部屋戻ろっか。」
「そうだな。」
私たちは立ち上がりメロの部屋に向かった。
*en…*
「あ、ニア。」
「ナナ、メロ、お揃いで。」
「これ、マットが作ったんだけどあげる!」
「…ちょうど新しく作ったロボットで壊すガラクタを探してました。いただきます。」
(ガラクタって…)
(ひでえ…)
*end*