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What gift?
「ニア、」
「ありがとうございます」
「早いよ!」

部屋に入ってすぐ憤慨の声を上げることになるなんて。

今日はニアの誕生日。今は後ろ手にケーキを隠し持って、部屋のドアを閉めたとこ。

「あなたがこの後何をするか分かっているのでいち早く感謝の気持ちを述べたまでです」

ニアは時々、それが正しいと錯覚しそうな堂々とした態度で筋の通らないことを言ってのける。

「あのねぇ、プレゼントをもらう前にお礼を言うのは早すぎというものです」

ため息をつきながら窘める。勿論、誕生日にいそいそと何かを隠し持って部屋にくればプレゼントだと思うのは当然だけど。
確認する前にお礼を言うなんてちょっといただけない。寂しいじゃない。

「そりゃあさ、ニアにはプレゼントなんてお見通しだろうけどさー」
「いえとんでもない。私にはプレゼントといったらケーキくらいしか頭に浮かびませんから。そんなベタなものを安易に用意する訳ないでしょうし」
「…それ、わざと言ってますよね?」
「どうでしょう」

腹の立つ。

一体全体こんな24歳がいるでしょうか。

だけどこんな24歳のことを愛しているので仕方がないのです。悔しい。

しかも24歳は私のこの気持ちを全て見透かして余裕をかましているのです。悔しい悔しい。

楽しみにこっそり用意した…
「私をイメージしてホワイトチョコをあしらったケーキなんてまさかそんなありえないとは思いますが」
…ホワイトチョコケーキ。

たまにはと思ってちょっと恥ずかしいけれどプレートには…
「くん付けしていたり。さすがにそれは見当違いか」
…ニアくんの文字。

ろうそくは勿論…
「太いのが2本に細いのが4本のろうそくですか」
そりゃそれしかないでしょう!

…悔しい。浮き足立って用意していたのは私だけで、これらの全てはニアの目にはお見通し。見通すも何も、抜けてる私が用意するものなんて丸見え状態なのかもしれない。

情けない…それどころか悲しくなってきた。
でも今日はせっかくのお誕生日。しょぼくれてもしょうがない!
こうなったらニアに答え合わせを楽しんでもらう方向にシフトチェンジだ!

そう思うと何だか気持ちもすっきり。
自分で作ったホワイトチョコのケーキを意気揚々とスプーンですくう。

「はい!」

どーせバレバレなんだから、恥ずかしがることもない。堂々とスプーンを差し出し、ニアの方を見る。

だけどそこにあったのは珍しくポカンとした、ニアの顔。
まん丸になった目。初めて見た。

「どうしたの?ほらほら、あーん」

ほんの少し目を泳がせたニアは、ほんの少し桜色に染まった頬をして、ほんの少し斜めに視線を投げながら、ほんの少し口を開けた。

「はい、あー…ねえそれじゃ食べさせづらいよ。

ん、待って」

今、ニア言った?

「どうせお口あーんとか言い出すんでしょう」って。

「スプーンで私に食べさせるつもりでしょうありえません」って。


…言ってないよね?

さっき起こった"ほんの少し"の大連鎖の意味が分かった気がする。
私の中でピースがピタリとはまる。

「え、あーんは想定外?」
「いえ」
「でも驚いてたよね?」
「別に」
「さすがに分からなかった?」
「いえ」

否定ばっかり!素直じゃないんだから。

そう思って唇をとがらせたところで、愛しの24歳が私の方にサプライズプレゼントをくれた。いただいてしまった。

「当然分かっていましたが。…いざやられると照れるもので」

「ひゃああ!ニア!!」

私はニアからの想像もつかない言葉に、結局見透かされていたことなんてすっかり忘れて飛びついちゃう。
といってもケーキとスプーンをぶつけないよう腕は回さず、ニアの首元に顔を寄せるだけだけど。

何だっていい。見透かされていても、サプライズにならなくても。何なら喜んでくれたかも分からなくたっていいよ。

今を一緒に迎えられる幸せに頭のてっぺんまで浸かって、うんと楽しいお誕生日を過ごそう。

少し離れていい間を取って。今度こそすくったケーキを愛しい人にお届けする。
こんなウキウキする時間をくれてありがとう。来年も再来年も、ずっとずっと側にいさせてね。心の底から祈って願って。

「はいニア、お誕生日おめでとう!あーん!」


happybirthdayNear! 2015**
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