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冬の夜
 吐く息の白さに、自分の中にも確かな温度があることを知る。

 屋外は冷え込み、とても快適とは言えない。
 それでも漆黒に浮かぶきらめきを眺めるならば、この厳しい寒さが相応しいと思う。

 捜査員に用意を任せた防寒具は、厚地のコートにマフラー、ニットの帽子、耳当てと手袋。白で揃えろと言った訳でもないのに見事に選び抜かれたそれらを、静かに受け入れて身に纏う。
「雪のよう」「ニアらしい」と褒め言葉が発せられる。
「はぁ」「どうも」と答えて、応じる。まんざらでもない、と受け取らせてから、そっとバルコニーへ足を伸ばした。

 自身の温度を実感した後に見上げた空は、「抜けるような黒」と表現したくなるような闇だ。その闇の中で、小さな星々がはっきりときらめいている。
 放たれる光は、何に遮られることなく突き進み、時を超えてこの目に届く。手を伸ばしても遠く及ばない遥か彼方で、こちらを見よ、と求める光。確固たる自信で、強く主張し続ける熱。

 やたらと持ち出されることの多い「冬が似合う」という自身のイメージなど、まるで見当違いだと思う。

 しんと冷えた冬の夜は、メロのもの。
 寒さなど、感じさせない彼のもの。


 分かち合う機会など永遠に訪れない。それでもこれは真実だ。

 どれだけ時が経とうとも。誰も知る由がなくとも。
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