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たまには、スパイス
「マットが言って!!!」
「なんでだよ!!」
「マットのせいでしょ!!」
「俺かよ!……や、まあ、俺か」
「そうだよ馬鹿!もう口聞かない!」

メロが怒っている。

事の発端は果てしなくシンプル。

昨日のおやつタイム、マットが私のマグカップを自分のと間違えて口に運んだのだ。
それをちょうどメロが見てしまった。

「なのにメロったら、第一声なんて言ったと思う?」

憤慨する私に、マットが申し訳なさそうに答える。

「ナナの注意が足りない」

「ああ!そう!!」
「まあナナ落ち着けって…」
「これが落ち着けるかって!!」

本日のおやつタイムを前にして、私の怒りは頂点に達していた。

キーキー怒っているところにメロが入ってきたけれど、そんなこと構ってられない。
何あの無愛想な面。私の言い分を聞いてくれなかった。

「ナナ」
「注意が足りない私に何か用ですか?」

話しかけてきたメロをキッと睨んで3人揃った部屋を逃げるように飛び出す。

こんなに怒ってるのに、こんなに私悪くない!って思ってるのに、メロに分かってもらえなかったこと、とっても悲しくて、胸が苦しい。

「おいナナ!」

うわついて来た。
今は話したくない気分だから、全力で背中を向ける。

手首は簡単に捕まるけれど、心までは捕まえさせない。簡単に振り向いたりしない。そんな風に翻弄させられてたまるか。

腕を捕まえられてもなお、渦巻く思惑を抱えて頑なに立ち尽くす。


さあどうする?
もっとお説教?言い訳?逆ギレ?
どんなことされたって簡単には許さないんだから。

決意を背中で表明していると、悔しながら、それはふわりと包まれることになる。

「悪かった」

う…思ったより素直な謝罪。
くるって振り向きたくなる!けどまだ我慢。

「ナナに八つ当たりした」

そうだよ!ばか。絶対許さないんだから。

悔しくて、でも伝わった安堵感で、涙が出てくる。
やだなぁ、肩の動きで、伝わってしまう。

「泣くなって…」
「泣いてない!」

「クッキー買ってきた」
「クッキーだけ?」
「ドーナツも」
「他は」
「アイス」
「アイス…」
「一緒に食べよう。ナナがいないとうまくない」

メロはしかして反則級に優しい謝罪を繰り出し、私達は仲直りの運びとなったのでした。


たまには、スパイス


さて問題はドアを開けたその先に。

「あ!ちょっ!マット!」
「それ、俺のマグ…!」
「ええっ!?」
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