ハウスの24時
PM3:00「イチゴショートは正義です。」
「この間はモンブランも正義だったよ。」
いちいち揚げ足を…といった顔でLがじとっとこちらを見て、口を開く。
「「甘いものは正義です。」」
「やったあ!!Lのセリフ当てた!」
嬉しくなった私は立ち上がりガッツポーズをする。
絶対これを言うと思った。
「当ててくることを想定して、わざと言ってあげたんです。」
Lの屁理屈とも取れるような言い訳が始まる。
「本当です。」
疑いの目を向けていたら拗ねてしまった。
「じゃあ、次も何を言うか当てるから、一緒に言ってね?」
「いいですよ。」
「せーのっ!」
「紅茶が欲しいっ」
「あなたが欲しい」
「へっ?」
後半は一緒だったし、重なっちゃって何と言ったのか聞き取れなかった。
「わぁっ」
向かいのソファーに掛けていたLが突然覆いかぶさるようにこちらに来て、私は素っ頓狂な声をあげる。
迫るLの胸元を手で押さえながら、さっき彼が何と答えたのかを理解した。
Lの部屋にて甘い甘い、おやつタイム。
special thanks! to you**
PM7:00
「いつまでやってるのー?」
近付いていることを教えるように、わざと少し大きい声をかけメロの元へ行く。
首筋に汗が光っているのが、暗闇の中でなんとなく見える。
「あぁ、もうこんな時間か。」
メロがふと気がついたようにサッカーボールを端に蹴りやる。
「はい。段々日が短くなるね。」
タオルを渡しながら声をかければ、
「サンキュ。そーだな。」
汗を拭きながらメロが答える。
「冷やして風邪ひかないようにね?」
心配して顔を見ると、メロが止まった。
太陽と月が入れ替わる間。頼りない明るさの中で表情は見えない。
突然髪の毛をバサバサと弄られ、私は「きゃあっっ」と悲鳴をあげる。
「ちょっ何すんのよ!」
先に行くメロを追いかけて怒る。
「お前のその誰にでも優しいとこが気にいらねえ。」
もう、何でそんなこと言うのよ、馬鹿。
気まぐれに愛想を振っているわけではないのに。
切なくなって追いかける、夜の始まりのグラウンド。
special thanks! to you**
PM10:00
「マット…今日も電気消し忘れたら許さないからね!」
「電気代払ってんのワタリなんだからいーだろーっ」
「ワタリに迷惑かけたくないじゃない!」
でも俺も稼いでるし、ハウスの為の仕事もしてるし…とマットがぶつぶつ文句を言う。
「そうは言っても、電気を点けっぱなしで寝るのは身体も休まらないし、良くないでしょー。」
私も半ば意地になりぶつぶつ言い返してしまう。
「マット頭いいのにそういうとこだらしないんだからさー。」
ぴくりとマットが反応する。
何か余計なことを言ってしまったかな。
「俺が頭いいって?だろだろ?」
「な、何よ…。」
じりじりとマットが近付いてくる。
「何で俺が毎日電気消さないか分かる?」
「は?
…わぁっ!」
突然歩みを早めたマットがぐっと顔を寄せ、耳元で囁く。
「そしたらこうやって電気消せって言いに来てくれるだろ?」
洗い立ての私の髪にキスを落とし、マットが顔を離す。
まずい。
「明日は来ないからねっ!」
赤くなった顔が見えないよう大急ぎで電気のスイッチを押す。
部屋に向かいながら頬を冷ます、1日の終わり。
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AM0:00
「…起きてる?」
「はい。」
ニアの部屋に水を届ける。
この時間帯まで起きてるなら、多分少し喉が乾く頃。
「ありがとうございます。」
忙しそうだな…。身体が心配。
グラスを置いた後、静かに座って散らかっているピースの一つに触れる。
ニアは黙々と作業を続ける。
このピースを一つ持ち出したら、彼はいつ気付くのかな。
寂しさついでにそんなことが浮かぶ。
試してみようか―――
そんなことを考えながらピースの一つを握りこぶしの中に入れると
「持って行かないでくださいね。」
即座にニアが言った。
見てたの…?
心臓を掴まれたかと思うほど驚いた。
「ニアって、見てないようでちゃんと見てるんだね。」
そうだといいな、と思いながら呟く。
「さぁ。どうでしょう。」
相変わらずの返事をして、ニアはグラスに手を伸ばした。
もうすぐ一日が終わる。
深夜の部屋に、二人きり。
special thanks! to you**