夜風
このお話ではお好きな飲み物をメロに買ってきてもらえます♪
*name change*
夜風が段々と涼しさを帯びてきた夏の夜。
私はテーブルの上を片付けながらそろそろかな、と食事の支度を始める。
携帯の着信音が鳴る。
「もしもし?」
電話をかけてきたのは、メロ。
「もうすぐ着く。何か飲むか?」
「ありがとう!ジュースがいい!」
「ぁぃ。」
メロは小さく相槌を打ってさっと電話を切る。
後は料理を盛り付けるだけ!にしたところで、さっき少し気になったことが頭をよぎる。
些細なことだけど。
今度は私からメロに電話をかける。
「どうした?」
メロは、もしもしとか、はいとかそんな出方はしない。
大抵なんだ?とかどうした?とか言う。
私がわざわざ用事があって電話をかけていると思うと、気になるんだそうだ。
言葉はきついのに、安心する。好き。
「メロさ、すこーーーしだけ、鼻声だよ?結構涼しいけど、大丈夫?」
「おお、そう。意外と寒い。」
「気をつけて帰ってきてね。」
「はいよ。」
静かに、電話を切る。
ちょっとそこまで出迎えよう。
無愛想だけど優しいメロとの生活は、本当に愛おしい。
幸せな気持ちで準備する。
小さな肩掛けを用意して、飛び出すように玄関を出る。
5分くらい歩いたところで、向こうから細身の青年がこちらに向かって来るのが見える。
「メロっ!」
メロは私を見て少し驚く。
「ナナ!夜は危ないだろ。」
「だって…風邪ひいたら大変だから…。メロが心配で…。」
メロが困った顔をする。
注意したいのに、愛しくてできないって顔。
こんな時とびきりの幸せを感じる。
メロ、困らせてごめんね。でもその顔、いただき。
持ってきた肩掛けをメロにかけると、
「夜は出歩くなよ。」
と呟いたメロが私を引き寄せて一緒に肩掛けの中に入れてくれる。
「あんなに暑かったのに、油断すると寒いね。」
「だな。」
「メロも肩掛けくらい持って出掛けなよ。」
「やだ。荷物になって邪魔だろ。」
「だな。」
「真似すんな。」
くすくす…と笑う。
メロと一緒にいると笑いがこぼれるような瞬間が沢山ある。
ない人にはないんだろうな。
私にはメロがぴったりなの。
「それにしてもさみーな。」
「帰宅したら、まずココアだね。」
「だな。」
二人でココアの約束をして足を進める。
「そうは言ってもまだ夏だよ(笑)?」
「けど寒いんだから仕方ないだろ。」
「だな!ふふふ!」
4度目の「だな」に、また笑いがこぼれる。
そう、
でもまだ…夏の夜だよ?
二人寄り添って歩く姿をもし誰かに見られたら、恥ずかしいなぁ。
そう思いながら、メロの暖かさと共に家まで歩く。
夏は終わるけれど、今度は二人の秋が始まるから、それもいいよね。
*end*