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その後。
キラ事件も解決を見せ、少しだけ、ほんの少しだけ事件の記憶も薄れつつある頃。
ニアの部屋に飲み物を届けた私は、確か驚きで言葉が一瞬出なかったと思う。

部屋に一歩立ち入ると、屈強な体つきの中年男性、意志の強そうなキャリアウーマン風の女性、優秀さを纏った比較的若めの男性が一斉にこちらを向いた。ニアの部屋では下げがちだった視線が何人もの足を捉え、慌てて顔をあげた時に目に入ったのが前述した三人で、それが出会いの瞬間だった。
三人とも大げさな動きはしないものの、その場の空気がピンと張り詰めたのがすぐに分かった。

彼らは戸惑うような顔で私を見つめ、視線の奥でこちらを探っていた。まるで部外者が迷い込んだかのような雰囲気に、私はお邪魔してしまったかとひどく狼狽した。

そんなことおかまいなしなニアは手元のラジコンから目を離さず、まるで会話の続きのように滑らかに話し続けた。

「彼女はナナさんです。今主に日常の手伝いを彼女に任せています」

ニアが語る紹介の言葉に、迷惑をかけてしまった訳ではなさそうだと胸をなでおろす。

「ナナさんはハウス内のことをよく知る人物の一人です。あなた方が懸念されるようなことは一切心配要りません」

ニアは私の立場が守られるような、きっちりとした説明をしてくれる。

そういうところが好き。
じんわり感じて胸があたたかくなる。


私は改めて三人…レスター指揮官、リドナー、ジェバンニの方を向き、深々とお辞儀をした。


*


あれから時々元SPKが集合する時がある。

最初、ニアが彼らを呼び寄せることはなく、必要に駆られると彼らの方が短時間顔を見せた。会話もほとんどなくドライなものだったけれど、徐々に捜査を共にする機会が増えた。

外部の手が必要な時、接触し捜査を共にするのにハードルが高くないゆえニアも頼みやすいのだろう。
放っておくとずっと一人でいられる人だから、私は四人の関係を喜ばしく思っている。

出会いの日こそワタリが案内したけれど今ではすっかり私が彼らの案内役になり、その時にちょっとした会話をするのが楽しみの一つになっている。

彼らはみな有能な常識人なので、私が話しかけた他愛無い雑談にも心地よく返事をしてくれるのだ。

ハウス内にはいわゆる"天才"しかいないので、子ども達やニア達と会話するのとは違う、"普通"の会話ができるこの時間は私にとって一種の癒しだったりする。

「さてと…!」

私はあの時ニアに届けたのと同じ紅茶をくい、と飲み干して、しゃんと立ち上がる。

今日は十時。

約束の時間まであと十分。

そろそろ飲み物の支度にキリをつけて、いつでも玄関に向かえるようにしておかなくちゃ。

今日は何を話しかけようかな。

ジェバンニに天気の話をするのは少し飽きてしまったから前回嘆いていた減りゆく体重について、少しは増えたか聞いてみよう。
リドナーには、お勧めしてもらった落ちにくいリップの使用報告を。
レスター指揮官には…そろそろ結婚してるかどうか聞いても怒られないかな…?

「…あ」

小窓から見える裏門に、黒い車が入ってくるのが見えた。

胸がウキウキする。

浮かれすぎてニアに怒られないようにしなくっちゃ…!と考えながら、私は急ぎ足で玄関に向かった。

その後。

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