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お土産
今夜ほど面白い夜はなかった。

**

夕方、二人はいつ帰るかな?ごはんいるのかな?と考えていたら、先にメロが帰宅した。

それがなんだか、妙に柔らかい。

態度?ううん、表情、かな?

「おかえり。何かいいことあった?」

「さっきコンビニでこんなもん見つけた。」

「あら、」

メロが差し出した袋を軽く覗けば…

ホカホカの肉まん。

そっか、初めて見たのかな?

私は既に食べたことがあるのだけど…。

「チョコまんもあるね。」

見たままを言葉にする。

「そそられるだろ?」

うん、そそられるけど…私はそんなことよりチョコまんに興奮しているメロの方が可愛くてそそられる。

「触るなよ?」

そう私に言いつけると、メロは上着を片付けに一度部屋に向かった。

面白いなぁ。あんなメロ、初めて見た。

そんなことを考えていると、ズカズカとブーツの音を鳴らしながら、マットが帰ってきた。

これがまた、最高の笑顔。

「ナナただいま!聞いてくれ!さっきそこのコンビニでいいもん買ってきた!」

コンビニ…デジャヴの予感。

「見よ!肉まん!ホカホカの皮の中に具が入ってんだって!うまそうだろ?」

「…うん。」

驚いてあげたいけど、メロの手前もあるし、それに二人とも…そんなに喜ぶか?

「何だよ、反応薄いなー。分けてやらねーぞー!」

「えー私も食べたい!#nikuman#が好き!」

すると部屋から戻ったメロと、まだ玄関にいるマットがポカンと口を開ける。

「ナナ、食べたことあるのか?」

思った以上に気まずい空気になってしまった。

「え…あ、うん、試食で少しだけ!」

慌ててごまかす。

「何だ、早く言え…」と言いかけたメロが、マットの持っている袋を見て言葉を失う。

「ちぇっまぁ三人分買ったからとりあえず食おーぜ…ってあれ?」

室内に上がったマットもテーブルの上に置かれた袋を見て、間の抜けた声を出す。

三人でそれぞれその場に立ち尽くし…シーンとした空気が流れる。



「ぷっ…」


我慢できずに吹き出してしまった。

吹いてしまったら最後、笑いが止まらず、お腹を抱えて崩れてしまう。

「ちょっ!そこまで笑うことないだろ…!」

髪ならず顔も赤くしながらマットが恥ずかしそうに言う。

メロも照れてるのか何なのか、笑いを堪えたような妙な表情で椅子に座る。

「ふ、二人揃って、中華まん買ってくるとは…な、仲良しだね…!!」

少し落ち着いたところで発言すると、また笑いがこみ上げ再度吹き出してしまう。

「もうやめろ…」

片手をおでこに当て、メロまで赤くなってきている。

「ふ…二人とも可愛いよ…(笑)

ささ!せっかく買ってきたんだもん、あったかいうちに食べよっ?」

明るく提案すれば、

マットが苦笑いしつつも「そうだな!」と椅子にかける。

それなのにメロはまだおでこに手を当てたまま。

「メロ?もう袋触っていい?



えっ!!?
ぷっ…あはははははは!!!」

メロの袋をよくよく見てみれば、チョコまんを4個、更に私とマットに肉まんを2個ずつ買ってくれており、全部で8個の中華まんが入っていた。

「ちょ…こんな食い切んねえだろ!!」

マットも吹き出す。

メロが今や真っ赤になりながら、「うるさい…」と呟く。

その晩私たちはたらふく中華まんを食べた。

食べ終わった頃には帰宅した時の恋しい気持ちは三人ともすっかり消え去り、

「もうしばらくはいらない…」

と思った。

窓からは、気持ちのいい夜風が入ってきて、虫の声も聞こえる。

もう少しお腹が楽になってきたら、私達はきっと思う。

「秋だね」って。


*end*
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