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ビキニなんて絶対着ない!L編
つまり、この、白くてすべすべしていて、薄く柔らかい布切れを下着だと思え、と。

そう言いたいのは解った。


ビキニなんて絶対着ない!L編



…本当に?

あの人にこういう思いをさせられる人は何も私だけではない。
ワタリ、夜神局長、皆さん、お疲れ様です。
みんな同じですから、落ち着いて、落ち着いて。


えぇ…?それにしたって。

本当に、本当に?


しかしながらどれだけ頭の中だけで抵抗したところで、とどのつまりはそういうことなのだ。

だって脱衣所には私がシャワーを浴び終わったら着る予定だったルームウェアがあって、足元には揃えたスリッパがあって、タオルもあるし愛用の化粧水もある。だけど下着だけがなくて、代わりにこの白ビキニが置いてあるんだから。


…先日。ミサさんが雑誌に掲載されたグラビアを持って帰ってきて、月くんに見せびらかしていた。

ミサさんの本業はグラビアではないのでそんなに際どくはなかったものの、華奢な身体に派手な水着がよく映えて、普段見ている彼女の普段見られない素肌や谷間に私が妙な興奮を覚えてしまった。

それでLに「凄いですよ!私絶対着られません」とつい雑談を持ち掛けてしまったのが運の尽き。

あれから2日経った今夜、唐突に「何故着られないと考えるんですか?」と聞いた時から、彼はこの作戦を実行し始めていたに違いない。

流されるように会話していた。

「だってあんなにあられもない姿、恥ずかしいじゃない」
「露出部分に関しては下着と全く変わりありません」
「でも、下着姿で人前歩かないでしょ?」
「そうですねしかしあなたも私の前でなら下着姿になります」

「…何が言いたいの」
「下着と思って是非」
「いや、いや、いや、絶対着ませんよ、絶対着ません恥ずかしい」
「今さら照れることがありますか、昨夜のあなたの方がよほどあられもない「エル!!」

真意の掴めない眼差しに持っていたクッションを投げつけ脱衣所に飛び込んだ。

準備は万端、鍵もしっかりかけた。
そりゃあ、Lほどの人だからやろうと思えばいくらでも脱衣所や浴室に侵入可能であろうことは理解してる。

それでもまさか実際にやるとは思ってもみなかった。


「…本当に?」

今日何度目かの心の呟きが、口から漏れていよいよ本物の呟きになった。

本当にこれ、着ないとダメ?

今さらながら、どうせ着るなら普通にビキニとして大っぴらに着る方がよほど健全な気がする。

リラックスウェアの下にすべすべの白いビキニ、見えていないのに、下着と変わらないのに、かえっていかがわしいような。

肩にかける細い紐に一度腕を通しかけて、やっぱりやめる。このタイミングで脱衣所に押入られたら絶対に立ち直れない。

私はきっぱりと心を決めて、白い生地を折りたたんだ。


**


「L」

声をかけたらどことなく浮ついたLがすぐにこちらを振り向いた。
ビキニを突っ返すポーズを取る私を見るなり目を見開いて、驚いている様子だ。

脱衣所に忍び込んで下着を奪い、代わりにビキニを置いていくなんて。子どもじみてて、はた迷惑で、なんて強引、言語道断!

残念でした、ビキニなんて絶っ対着ません!


決意をかたーく固めて睨みつけてやる。しかし指をくわえた名探偵から飛び出した言葉は、予想外にポジティブなもので。


「…誘ってるんですか?」

まじまじと私の身体を見つめるLに呆れて笑ってしまいそう。どれだけ見つめても、残念ながらビキニは着てません。

「あのねえ、どうしてそうなるのよ、普通勝手に脱衣所に…」

そこまで言いかけた言葉を潰されて、私は突如思い知ることになる。

いついかなる時も。

彼が誘導に長けていることを忘れてはいけないって。
そうじゃないと、抵抗したつもりでまんまとのせられてしまいます。

一度罠にハマったら、さあ大変。


「今、下着は」


その点に関しては私が抜かったと


「…え?」


今は充分に自覚しています。


ビキニなんて絶対着ない!
L編
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