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「迫真の名演技でした」
「やーめーてー!!!」

恥ずかしさで唇がむずむずするのを抑えるように自分の頬を両手で包んだ。

「無事に解決できたと喜んでもらえるかと思ったのですが」
「もうちょっと他にやりようはなかったかな!」
「あの鬼気迫る表情がなければ無理だったでしょうね」
「もーーー言わないでーーー!」
顔を隠すようにLの胸に飛び込んで、肩のところをぽかぽかと叩く。ああ、恥ずかしい。


*


先日の出来事は、全てLに仕組まれていたことだった。

Lは、私に婚約者がいると告げれば月くんは引き下がると踏んだ。確かに元々こちらを探って試しているような感じではあった。

問題は月くんが納得するように婚約者がいる事実を伝えること。私がぎこちなく嘘をついたのでは簡単に見透かされてしまう。
そこで切迫感、真実味を引き出す為、Lが私のことも騙したのだ。

「人聞きが悪い。敵を欺くにはまず」
「味方から。分かってるけど…」

私が月くんにコーヒーを渡している時、近くに落ちるよう後方でダミーの指輪を投げていたらしい。
後から確認したところ自分のポケットにはLから預かった指輪がきちんと残っており、何とも脱力した。

あの日を境に月くんが私とLの仲を詮索したり、私に気があるような素振りをすることはピタリとなくなった。

つまり、結果オーライ。確かに、納得させることができたようだ。

そりゃ、私としてはLからの信頼がかかっているので迫真も迫真だ。あの必死な様を見られていたと思うと顔から火が出そうな程恥ずかしい。

でも…これで一件落着、ではあるかな。
頬の熱を移すようLの胸に押し当てる。

「あそこで自分の指輪だと発言したのは咄嗟の判断ですか?」
「そうだよ!Lとの約束守って必死に誤魔化そうと考えたんだから!機転が利いてなかなか上出来だったでしょ?」
「はい。ナナが指輪は自分のものではないと答えたら、そこまでしてでも婚約者を守りたいのが当然と言えばいいので特に機転を利かせる必要はありませんでしたが」
「む!」

顔を上げてLに反抗の表情を見せてみる。そんなこと知らないから、それはもう必死だったんだからね!

柔らかく睨む視線を受けて、Lが私の前髪を親指で掻き分ける。

「私、必ずフォローしますと言いました」
「あっ」

そうだ、そんなことを言ってくれていた。それから…

「…あなたは私が必ず守ります」

Lがあの時と同じ言葉を静かに繰り返す。前にそう言われた時と同じ胸いっぱいの安心感に包まれて、私は力いっぱいLを抱きしめる。私だって、あなたを守るよ。

不安と一緒に、恥ずかしさも溶けていく。だってそれもこれも世界一の名探偵がわざわざ私に用意してくれた、小さなトリックと包み込むような愛情だったんだもの。

腕の力を緩めると、自然と顔が向かい合った。近付くぬくもり、そっと閉じるまぶた。あとはもう、求めるままに。

ちょっとしたアクシデントを乗り越え絆を深めた私たちがこの後どうなるか…それは残念ながらここでは語れません。
だって私達の関係は、Top secret(極秘事項)、なのだから。


*end*
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