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Top secret1
機械の作動音だけが静かに響く深夜。

捜査本部には、私とL。そして月くんの三人が残っていた。

捜査員は皆各自部屋に戻っているのに今日はやたら月くんがねばるな、と思っていたら、さすが。突然口を開いた彼が鋭いことを言い出した。

「突然だけど、機会に恵まれたことだし聞いておきたいことがあるんだ」

機会は恵まれたというより作り出したのではないかと一抹思いながら、なんでしょう?と相槌してみせる。

「ナナさんと竜崎って、もしかして付き合ってる?」

一気に寒気が走るのを感じた。

真相は明らかにされていない。

けれど、Lが夜神月を疑っている。

それなら私の真実は夜神月=キラ。

見ている限り非の打ち所のない好青年なので、油断しそうになることもあるけど…私はこのビルの中にいる者の中で、誰よりもLを信じている。

「私がですか?とんでもないです!」

Lは雲の上の人、と崇める感じを出しながら全力で否定する。

「本当に?僕、二人は実は親密な仲だと睨んでたんだけどな」

爽やかに笑顔を見せながら月くんは確認を重ねる。


私達が付き合っていることを知ったら、Lに揺さぶりをかけたり、私を脅して情報を奪おうとすることだってあり得る。

これは、命に関わるトップシークレット。

「どこがですか…。私嫌がらせされてばかりですよ…」

Lには聞こえないヒソヒソ声で月くんに耳打ちする。
まるで本当に迷惑して、内心嫌がっているかのように。

「あはは!ナナさんは竜崎から嫌がらせされてるって言ってるよ?」
「あ!ひどい、本人に言われたら困る!」

あくまで、整合性を持たせて演技、演技。

「竜崎、今ナナさんには否定されたんだけど、本当にナナさんとは特別な関係じゃないのか?」
「特別な関係ですよ。信頼できるパートナーの一人です」
「…そうじゃなくて。恋人同士だったりしないのかってことだよ」

少しの沈黙。

月くんの真っ直ぐで美しい背中でLが見えないけれど、それはLが姿勢を崩していないことを意味している。多分Lは夜神月の目を見つめているのだろう。

「恋人同士ではありません。恋人をこんな危険な場所に連れてくる程私は間抜けではありません」

本当だよ。

さすがのLも、捜査本部にいるうちに恋人ができるとは思わなかったよね。

私は改めてLに胸を焦がす一方で、キラに直接接触しているであろうことをふと自覚し恐怖する。相反する感情が身体の中で混ざって眩暈がしそう。

「なんだ、そうなのか…!」

Lからは記憶を失っていると説明された妙に爽やかな月くんが、嬉しそうな表情を浮かべた。最近では私もすっかり捻くれて、嬉しそうに笑う頭のいい人はみんなおかしなことを考えているのではと思ってしまう。

「じゃあさ、僕がナナさんを女性として意識しても問題ないってことでいいね?」

うん、やはり。嬉しそうに笑う頭のいい人がおかしなことを言い出した。
私のことを女性として意識する、と。


「え!?」


目の前の二人とは情報の伝達速度が違う私の頭が事態を飲み込んだ時、素っ頓狂な声が出てしまった。

…どうしよう。

あくまで上司に助けを求める部下の顔を保ってLを見つめる。
Lは特に気に留めない様子でさらりと言い放った。

「構いませんよ。恋愛は自由です。まぁ…キラ捜査の最中に何を言っているんだ、とは思いますが」

Lがそう答えるのは、否定したら私の命が狙われる可能性があるから。
Lの恋人だと知れたなら、私は駆け引きの道具にも、絶望を与える手段にもなり得る。私はLの大切な人ではあってはならないのだ。

分かっているものの、いざ言われてみると少し切ない。Lに気付かれないよう、動作せず心の中だけで痛みが去るのを待った。

「何はともあれ、恋愛は一人ではできません。月君がそう思ってもナナさんがどう思うか」

顔を上げたLと一瞬目が合う。
どんな作戦で、どうしたらいい?
私一人では対応し兼ねるよ。焦る。

「またまた!月君たらさすがモテるだけあるね、煽てるのが上手」

ぎこちなく笑って流してみたが、月くんは意味深に続ける。

「はは!冗談だよ。半分くらいはね」


何て気を使う相手。


でも、私もLも気を抜く訳にはいかない。

私たちの大切な関係と命を、みすみす手放す訳にはいかないのだから。


*to be continued*
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