ひとりごと | ナノ

* 2016.06.14 DREAM

「あつっ!」
「馬鹿、揚げたてを頬張る奴がいるか…」
「…ふぁーい」

夕方の街は喧噪だ。家路を急ぐ人たちに紛れて、二人の声は、二人にしか聞こえない。

横を通り過ぎていく子供を乗せた自転車も、店先で立ち止まって話に華を咲かせるおばちゃん達も、猫におこぼれをそっと差し出すサラリーマン、吹き抜けていく風もオレンジの光も、全部全部同じ場所へ向かっている。
夏の夕方はどうしようもない。

「おかえり」って待っているあの場所へ帰る時間。
「さよなら」と去っていく当たり前の今日に別れを告げて。

「帰ったら冷やせよ」
「なにで…アイスノン…は口に入れちゃまずいよねぇ」
「氷」
「今朝使っちゃったもん」

メロ様は取り上げたコロッケに口をつける。
チョコとコロッケか、悪くないかもね。
夏の夕方と同じ甘じょっぱい味がするのだろう。
それからきっと、ほくほくするのも同じ。

「出る前に作っといた」
「うそー!?天才!」
「わめくな…ほら、行くぞ」

一歩先を行くメロの金髪が、今はオレンジ髪だ。
左手に荷物、右手にコロッケ…

(早くコロッケ食べ終われ!)

メロの掌に焦がれて願って。
こっちも氷が必要かもなぁなんて考えた。

舌も胸も、熱くてひりひりしている。
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