あるところに、マット、メロ、ニアという三人の男の子がいました。三人に、ロジャー母さんは言いました。
「マット、メロ、ニア、お前たちはもうじき15歳。そろそろ自分で暮らしておゆきなさい。」
そこで三人は、自分の家を建てて暮らしていくことにしました。
マットは要領が良くてきぱきと仕事をこなす子でした。しかし、少し爪の甘いところがあります。
「これでよしっと」
マットはわらを集めるとさっと束ね、あっという間に家を作りました。そして中でゲームを始めたのです。
時を同じくして面白いものの匂いに気がついた者がいました。パンダのような顔をした狼男のLです。Lは面白いものを探しては食いつくしてしまい、ここのところずっと退屈だったのです。
「あーけーて」
「げっL!」
「あーけーて
くーだーさーい」
「敬語に直した…」
マットは圧力に負け渋々ドアを開けました。そしてゲームを与えました。その他のことで差を思い知らされることを恐れたのです。
「改造しましたね」
「…うん」
「なるほど、考えましたね」
「へへー♪」
Lはマットの考えたゲームに夢中になりました。そして二人はあっという間に仲良くなりました。
ところが段々とゲームをするLの手の動きが鈍くなりはじめました。お腹が減ってきてしまったのです。
「甘いもの…」
「OK!いいところがある!」
マットはLを連れてメロの家に行きました。
メロはしっかり者でした。堅実に作業を進めます。そして集めた木の枝で家を作りました。
「メロ、チョコちょーだい」
「あ?」
「メロ、チョコください」
「…おい、呼んでないぞ」
メロは警戒しましたが、マットとLが家の中に勝手に入ってきてしまいます。メロは一生懸命な頑張り屋さんですが、報われないところがある子でした。
「L、それは非常用だ…」
Lはあっという間に、メロが非常用に仕込んでおいた"木の枝に見えるチョコレート"を発見し、いち早く食してしまいました。
「…」
メロは大層気分を害しましたが、そのままでは終わりません。いいことを思いつきました。
「そうだL、遊びのエキスパートがいる。退屈してるならあそこがお勧めだ」
「早速いきましょう」
メロは厄介払いにマットとLを連れてニアの家を訪ねました。
ニアは生活力のない子でした。しかし強かで難を逃れる術を持っていました。
三人がニアの家につくと、レンガブロックを積み上げて作られた豪邸がありました。
「いつの間にこんな…」
「おかしい」
「ニアのどこにこんな力が」
口々に訝しがっていると、豪邸の入り口横に設置されたスピーカーからニアの声が響きました。
「一晩で作りました」
「…ジェバンニだな」
「…ジェバンニだね」
「…ジェバンニですね」
三人はすぐに納得しました。
「お帰りください」
続いてニアの声が響きます。ニアは三人を家に招き入れる気がありませんでした。
メロとマットがどうやって厄介払いするか考えていると、Lが口を開きました。
「パズルを一緒にやりましょう」
スピーカーからは何の音も聞こえません。Lの様子を伺っているかのようです。
「お勧めの甘いもの情報も、斬新なプログラミングも教えてあげます」
それを聞いたマットとメロの目の色が変わります。
「新しい世界を一緒に作りましょう」
「L…」
「わーい!」
メロとマットが感激の声をあげた時、固く閉ざされていたニアの豪邸の門が開かれました。
こうして四人は仲良く豪邸の中で引きこもりはじめました。結局自活できなかったのでLが仲良しのワタリさんを呼び寄せました。
ワタリさんの本名をもじっていつしかワイミーズハウスと名付けられたその豪邸は、今でもイギリスの何処かに存在しているということです。
めでたしめでたし!