ひとりごと | ナノ

* 2020.07.02 DREAM

7/2水羊羹

冷蔵庫から出したての水羊羹が美しい。

シャワー浴びたての私にとても相応しい。

瞬く間に結露してみせる容器に、至福の指跡を乗せて。

さあ…

と思ったところでお邪魔が入った。

「涼しげでいいですね」

Lが放つその言葉は、一見共感。正しくは要求。

「これ私のだよ」

「知ってます」

「見られてたらリラックスできない!」

「どうぞ気にせず独り占めしてください」

何とも嫌味な言い方…。

そちらが嫌味で来るのなら、こちらも嫌味で返すのみ。
丁寧にすくった小豆色を乗せたスプーンを、大袈裟に、見せびらかすように、Lの目の前に向かってわざと動かす。

「はい。あーーーーん」

なんてねー!と意地悪するつもりが。

ぱくっとそのまま食いつかれたもので。

「あっっ!!」

「さすが、優しいですね。あと美味しいです」

本当に美味しそうに食べるから、もぐむぐとLの舌の上で解かれていく水羊羹がちょっと羨ましいくらい。

結局抗議する気も失せて、水羊羹は差し上げることにした。

ここまで計算済みだったなら、彼はやはり名探偵である。
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