7/2水羊羹
冷蔵庫から出したての水羊羹が美しい。
シャワー浴びたての私にとても相応しい。
瞬く間に結露してみせる容器に、至福の指跡を乗せて。
さあ…
と思ったところでお邪魔が入った。
「涼しげでいいですね」
Lが放つその言葉は、一見共感。正しくは要求。
「これ私のだよ」
「知ってます」
「見られてたらリラックスできない!」
「どうぞ気にせず独り占めしてください」
何とも嫌味な言い方…。
そちらが嫌味で来るのなら、こちらも嫌味で返すのみ。
丁寧にすくった小豆色を乗せたスプーンを、大袈裟に、見せびらかすように、Lの目の前に向かってわざと動かす。
「はい。あーーーーん」
なんてねー!と意地悪するつもりが。
ぱくっとそのまま食いつかれたもので。
「あっっ!!」
「さすが、優しいですね。あと美味しいです」
本当に美味しそうに食べるから、もぐむぐとLの舌の上で解かれていく水羊羹がちょっと羨ましいくらい。
結局抗議する気も失せて、水羊羹は差し上げることにした。
ここまで計算済みだったなら、彼はやはり名探偵である。