7/1夏休みの計画
ポストに入っていたチラシは、現実には不釣り合いなバカンスのお誘い。
今の私にそんな余裕がある訳でもなく、チラシの誘惑はタイトルに目を通した時点で即・却下。
手元で丸めたチラシを持って玄関を抜けると、おくつろぎのメロとぱちり目があった。
「なんか来てた?」
「来てない」
「それ」
メロは私の手元をあごで指し示す。
「南の島でサマー・バケーション!このチラシを受け取った方限定、スペシャルパッケージのご案内!」
高らかに謳って見せたら、メロはまぶたを下げて目を細くする。
「胡散くせえ」
「だから処分するとこなんじゃない」
共通認識ができたところでゴミ箱へ近づく。
「できるもんなら夏休み満喫したいよまったく」
休みが全くないという訳ではないけれど、ノリで放った言葉に、メロは相槌を打ってくれる。
「ドライブくらい連れてってやるよ」
突然の朗報に、ぴたりと動きが止まる。
これは、念願のメロの助手席に、乗っても良いという許可であろうか!
「えっ本当?気が変わらないように念書もらわなきゃ!」
改めて握るカラフルな紙。ぎゅっと丸めるその中に、冗談めかしてごまかした浮かれ気分を隠す。
南の島ではないけれど、私限定のスペシャルパッケージはいただいた。やるじゃんチラシくん。密かな感謝を込めて、手の中のそれを解き放った。