ゲットイントゥハー 3


ぱちりと目を開くとやけに腕がだるいことに気づいた。昨日寝落ちして変な体勢で寝たからだろうな、と思いながら手の中の携帯を見る。新着メール一件。


2010/3/4 02:12
From:ジョーンズ
【Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:】



「負けたのかよ…」

アリスの忠告を無視して突っ込むからだ。あのボスは真正面に突っ込んで敵う相手じゃないって言ったのに。

身体を起こす。立ち上がって腕を上に引っ張りながら伸びをするとボキボキと豪快に骨が鳴る。まだ成長期なんだろう。
可愛くて優しいアリス。

「悪いな、中身はこれだ」

パサついた短髪は指でさわってもちっとも気持ち良くなかった。









朝ギリギリの時間に学校に行くのが習慣になっている。
別に学校が楽しくなくはないが、楽しいわけでもないので特に学校でいたくない。だからといって家にいたいということではないから、自分がどこにいたいのか自分でも分からないのが本当のところだ。

でも今は少し楽しいかもしれない。

学校に着くと目の前の席で友達と楽しそうに話すジョーンズに声を出さず話しかける。


「結局あのボスに最後の最後でさぁ…」
(聖水ぶっかけるんだよ、ばか。アリスの言うこと聞かねえと嫌われるぞ)
「そこは聖水使うんだよ。お前攻略本見てねえな?貸してやったのにー!」


あ、言いやがった。くそ髭め。今日散々メールでいじめてやろうと思ってたのに、と惜しい気持ちになる。

ジョーンズがなんだ、と拍子抜けしたように言った。

「やっぱりそうなの。アリスもそう言ってたんだぞ」

その言葉にドキリとする。ああ、やっぱり俺はジョーンズとメールしてるのか。不思議な気分だ。

「アリスって誰よ?」
「メールしてる子。なかなか可愛いんだぞ!今は実況でゲーム伝えてるから攻略本見たらつまんないだろ?」
「ああ、なるほどね。…て、坊っちゃん大丈夫?何急に突っ伏してんの」

フランシスが驚いたように言う。そりゃ突っ伏したくもなるだろう。

なかなか可愛いってどの口が言う。顔も見てないくせに。ていうか、顔見たら可愛いなんて口が避けても言わないだろ、お前。

「あー、いや…大丈夫…」
「本当かい?何かニヤついてない?」

くるりと振り向いたジョーンズがぬけぬけと言う。それはいけない、と思わず怖い顔をしてニヤつきを消した。ジョーンズが目を丸くする。

「わ、何」
「…お、俺にもいろいろあるんだよ、ばか」

チャイムが鳴って話は打ち切られた。そうだ、これでいい。あまりジョーンズと関わって尻尾を掴まれたら困るのだ。

(もうちょっと楽しませてくれよ)

その広い背に心の中で話しかける。
つまらない学校、つまらない生活、つまらない兄からの電話、唯一面白いのはジョーンズとのメールだけだ。








ジョーンズとアーサーの身長はさほど変わらない。だから背の順で並んでも前後だ。むしろこれで仲良くならない方が不自然だろう。まあ仲良くないわけだが。

ボールをドリブルする。運動は好きだ。何も考えなくて済む。
シュートするとパスリと軽い音を立てて通り抜けた。

「GOOD!!」

後ろから掛けられた声に驚いて思わずボールを落としそうになる。それを見たジョーンズが笑いながらスリーポイントのゾーンからシュートした。それが入るんだから憎たらしい。

「やぁ、ここ使っていいかい?」
「…勝手にしろ」

ドリブルシュートをする。口笛を吹いたジョーンズも同じようにシュートした。

「おれ、今ゲームしてるんだ。君はしてる?」
「特にしてない」

ぽんとボールを遠くに放ったジョーンズがアーサーのディフェンスに回る。ワンオンワンらしい。がぜん燃えてきた。

「結構それ面白いんだけどね、難しいよ」
「当たり前だ。ギャラストの中ボスはラスボス並みに難しいから、なっ」

フェイントをかけてシュートする。放物線を描いたボールは、…よし、入った。負けてたまるか。

けれどジョーンズは何も言わず、ただこちらをじっと見つめた。

(何だ?)
「何で君が俺がやってるゲームを知ってるの?」

その時やっと自分の失敗に気付いた。










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