こんなの素面の彼では絶対拝めない光景なんだろうとどこか遠くで思いながら、アルフレッドはそれから目を外すことができなかった。

頭の血管がぶち切れそうにドクドクうるさい。アーサーが目線だけはテレビに固定させて熱心にそれを擦る。時折気持ち良さそうにあ、あと漏れる声の甘さにアルフレッドは膝の上でぎゅっと拳を握りしめた。
酒を飲んでもないのに顔が赤い。

生真面目なアーサーはあまり肌を見せないし、恋人になってもキス止まりでどちらかというと気の置けない友人のような関係に近かった。性的な話は何だかんだでしたことがない。

クラクラする。夢中で擦っていたアーサーはふとこちらを見て、動きを止めた。

「…アル」
「へぇっ!?」

声が裏返る。アーサーは依然酒に酔ったトロンとした目でこちらを見ていて、ごくりと生唾を飲んだ。思春期の青少年には目に毒だ。

「勃ってんじゃねえか。こすれば…?」

声すら低く掠れていて、甘い。けれど動かない(正確には動けない)アルフレッドに焦れたのか、アーサーが身体をよじってこちらに近づいてくる。伸ばされた手は、しかしジーンズのチャックに触れる前に動きを止めた。

アーサーがキョロキョロ周りを見回す。多分手に付いた自分の先走りなんかを拭きたいのだろうが、残念ながら近くにティッシュはない。アーサーは迷わなかった。

ぐいとチャックに顔を近づけて、今度こそアルフレッドは目を見開く。カチ、とアーサーの真っ白な歯が金属に当たる音がした。
クンと引っ張ってアーサーはアルフレッドの勃っているそれに引っ掛からないよう慎重に、下ろした。

一体どこのAVだい。ていうか酒はいるとエロくなる体質なわけ。

聞きたいことは山ほどあるがそんなことはもう問題でなかった。今はただ下半身の一点に集まっているこの高ぶりをどう沈めるか、それだけだ。

ジジジ、と全て下ろすとアーサーが満足したように顔を離す。さすがにそのまま口フェラということはないらしい。

「なぁアル、勝負しねえ?」
「…何の?」

今は勝負云々よりまず一回抜きたいのだが、と思いつつとりあえず聞くと、アーサーはにっこり満面の笑みを見せた。心臓に悪い。

「どっちが早くイくか」

早くイッた方の負けな。
酔ってるんだな、と今日何度目かの確認をする。アーサーは未だにっこり笑みを崩さない。
完全に場の空気に飲まれたアルフレッドは浮かされたように下半身に手を伸ばした。驚く。触ってもいないのに、完勃ちしている。

擦り出したアルフレッドを見てアーサーも再開する。アルフレッドがそれを凝視しているのにも気付かない。AVなんて、既に眼中になかった。

「は、ぁ…あっ、あ」

テストの度に成績を競争する。昼ご飯を一緒に食べる。下らない話をしながら帰る。体育では必ず別チームになって本気で争う。休日に遊ぶ。メールや電話をする。思い出したようにキスをする。

真っ赤な顔をしたアーサーが恍惚の表情を浮かべてこする。甘い声はひっきりなしにアルフレッドの耳を犯す。グ、と低く唸って目をきつく瞑ったアルフレッドは自身の顔も熱が出たときのように赤くなっていることを嫌と言うほど理解していた。

扱きながらじりじりと前に近寄って、アーサーの擦っているそれに手を伸ばす。握った瞬間一層高くなった声に理性は弾け飛んだ。

「はっあ、あ、ある、やっはや、いっ、ぃ!」
「あ、さ、アーサー…っ」

ぎゅっぎゅとふたつ掴んで擦りあげるとアーサーがコテンとアルフレッドの肩に額をすり付ける。もうたまらない。揺らすように強く擦るとアーサーがひっきりなしに喘ぎながらふるふる頭を振った。

「アル、や、んぁっゆら、さな、で、フレディ…っ!」
「っ、んなの、聞けないに決まってる…!」

ぎゅっと鈴口に爪を立てて擦るとアーサーは身体を大きく震わせてアルフレッドの方に射精した。アルフレッドも同時に出したものだからふたりとも互いの精にまみれる。

でも、もういい。雰囲気はばっちりだ。このまま最後まで。

「う」

アーサーが、呻く。

「ぎもぢわる…」
「へえ…、ええっ!?」

思わず大きな声を出すと顔面蒼白なアーサーが口に手をやった。

「はく…」
「ええええっ!!?」

それからは散々だった。どうやらしこたま飲んだ後に揺らしたのが原因だったらしいが、暫くトイレの住人となったアーサーの背をさすりながらアルフレッドは小さくため息をつく。

自分たちの初めてはいつになるやら、見当もつきそうにない。









100606
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