今日を決行の日と決めていた。

今晩お泊まり会をするアーサーは先程からコンビニで歯ブラシなどを物色中だ。アルフレッドは何も言わず、棚から小さく薄い小箱を取る。大事なものだ。調べてみるとこれを付けないのは男女問わず負担になると書いていたし、自分はアーサーに負担をかけたくない。

アルフレッドは今日を決行の日と決めている。何ってもちろん、初めてのセックスの、である。






アーサーといわゆる恋仲になるまで、自分たちは奇異な道のりを歩いてきた。メールから始まったくらいは現代ならよくありそうだが、自分たちはひと味違う。初めは完全にアーサーの悪ふざけだったのだ。

「アル、晩飯は?」
「ファミレス行こうよ」
「んー」

それから紆余曲折を経てこんな結果になったが、今結構楽しいので何でもいい。

アーサーは可愛い。女の子と比較してじゃないけど、なんだか無性にたまらなくなる時がある。付き合う前に一度、付き合いだしてからは何度も彼をオカズに抜いた。
男で抜けるなんて真性のホモじゃないかと泣きたくなったりもしたけど、女の子も好きだし他の男では勃たないのでやっぱりアーサーがいけないのだろう。

「お前何頼むの」
「たっぷりチーズのハンバーグのエビフライのせ450グラム…の洋食セット。ライス大盛り!」
「うげ…食いすぎだろ」
「そうかな」
「そうだよ」

アーサーは文句たれで鈍くて苦労が絶えないけれど、好きだ。話したいし、触れたいし、キスだってセックスだってしたいのだ。

たっぷり物が乗ったスプーンをアーサーが目の前でぺろりと食べる。人が何かを食べる仕草は信じられないくらいエロいんじゃないかと気付いたのはアーサーと付き合い出してからだ。あと少しで夏休みが始まる。

(夏休み前に大人の階段上ってやるぞ!)

突然ガッツポーズをしたアルフレッドをアーサーは怪訝そうに眺めた。








夕食後は今日泊まるアーサーの家でレンタルショップで借りたAVを見ようと言うことになった。というか、した。雰囲気作りは大事だ。

酒呑みのアーサーは(アーサーの本国はイギリスだから飲酒は許されている)スーパーで酒を買い占め、それを飲みながらの観賞会となった。よい子は真似しないように。

夏場だから部屋は暑い。アーサーはクーラーをつけて地べたに座った。アルフレッドもその隣に座る。暑かったからと言って既にビールを一本空けたアーサーは上機嫌にテレビが起動するのを待った。

しかし、どういう風に誘えばいいんだろう。アーサーは奥手でにぶいから勃っても恥ずかしがるだろうし、強引に触ればいいだろうか。嫌われてないし、アーサーも少なからず想像したことはあるはずだからそこまでは怖がらない、と思う。多分。どちらにせよ自分がリードを取らねば。

アーサーと恋人になってもう3ヶ月が過ぎた。最初はメールから始まったこの関係もこんなとこまできていた。

「っぷはぁ!おいアル、なにぼーっとしてんだァ?ちゃんと見ろよ」
「君ねえ、人が感慨深く思い出に浸って…って君いくら飲んでるんだい!?」
「あ?許容範囲だろ」

あっけらかんと言うアーサーの前には既に空のビール缶が4つも転がっている。信じられない。アテもないのに無茶な。というかピッチが早すぎないか。

酔ったのか据わった目に情緒の欠片もない顔でアーサーは画面の中で乱れ始めている女を見る。そうだ、この男は紛れもなくただの男子高校生だった。

「おい見ろよ、お前の大好きなブロンドFカップだぜ!しっかしでかすぎて締まりねえな、やっぱりDぐらいが丁度良くねえか?」

架空の女に嫉妬した可愛らしいアーサーは酒で眠らされているらしい。アルフレッドは痛くなってきた頭を押さえて、やっぱり今日は無理かもしれないと息を吐いた。喋るのをやめてAV鑑賞に戻る。

『はっやっんぁあ!おっき、やあん!』

女の声が狭い部屋に反響する。ロマンもへったくれもないただのAV鑑賞会の雰囲気でも、いくら自分がアーサーに呆れても、普通の男ならAVを5分も見ればやはり勃つものは勃つものだ。

疼く下半身は解放を望んでいる。どうせへべれけなアーサーは勃ちやしないし、今日大人の階段は上れないだろう。アルフレッドは仕方なく慰めに触れようとした。
そして何となくアーサーを見て、息を飲む。

「ッア、ーサー…?」
「あぁ…?ん、なに…」

いつの間にか前をくつろげたズボンから性器を取り出してこすっているアーサーが鼻にかかった声を出す。
言葉が出ない。あの奥手なアーサーが恥ずかしげもなく、まるで一人でいるみたいに。
酒の力は強大だった。










100603
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