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"オオカミ君"と"かまってチャン"


私が小学校五年生のとき、母親の再婚をキッカケに数年前この団地に越してきた私に出来た友達、場地圭介君。お母さん同士が仲良くしなさいって言ってから早数年。初めて出来た男の友達は私の初めての彼氏になった。そんな私は学校帰りに彼の部屋に遊びに来たのだが。

「ねぇ圭介ぇゲームしよーよー」
「バァカ今それどころじゃねぇんだ俺は」
「ちぇー。もうずっと勉強ばっかじゃん」

約束をせず勝手に遊びに来た手前、ワガママを言っているのは私だと分かっているけれど圭介はそんな私の事をうるさがらず何だかんだいつも迎え入れてくれる。テストが近いからか一生懸命似合わないシャープペンを握っている彼を見ていると、ちょっとだけ面白い。でも、いつもバイクと東卍の皆に圭介を取られちゃうから、ちょっとぐらい私を構って欲しい。しかも今はシャープペンと参考書に圭介を取られてしまっているときた。未だシャープペンを離さない圭介から視界を部屋に移すと押入れが目に入る。

ドラ〇もんと寝方が一緒だから前にバジえもんとからかったら怒られたことを思い出すと今でも笑いそうになってしまう。圭介は相変わらず勉強だから終わるまで横になって待っていようと座っていた私は立ち上がり彼の寝床の押入れへと登った。

「おい、パンツ見えてんぞ」
「見せてんの」
「…ほんとバカだろお前」

はぁ、と深いため息を吐く圭介に私はふふっと悪戯するように笑みを見せるとまた彼は参考書に目を移した。ちょっと誘ってみたつもりだったんだけど、彼は本当にそれどころでは無いらしい。ぷぅっと見られていないことに良いことに頬を膨らましてみる。女の子が誘うって結構勇気いるんだよ!って心の中で叫んでおいた。

布団へ横になって勉強中の圭介を見ていると、私の彼氏は本当に格好良いって思ってしまう。ちょっとお馬鹿だけど、黒髪ロングが似合っちゃう男なんてそうそういないぞって思う。シャツから見える腕なんかを見てると細いくせに筋肉あるんだよなぁって男らしさを感じる。いつの間にか背も伸びて、低く声変わりしたトーンで抱き締められて名前を呼ばれるのが本当に好き。私がいつも好き好き言っても圭介は笑うだけでその余裕っぷりが悔しいけれど、たまに好きってちゃんと口にしてくれるから良しとする。…それにしても暇である。





「…い、おい」
「……んぁ?」

目を開ければ圭介は私を覗き込むかのように見下ろしていた。いつの間にか眠ってしまっていたのかと寝ぼけた頭で体を起こすと、そのまま私は押入れの天井に頭をぶつけてしまった。

「いった!っつぅ〜」
「アホかお前。高さ考えろよ」
「くっ、圭介が押入れで寝てんのが悪いの!」

痛みで一気に眠気が覚めた私はぶつけた頭に手をやりながら圭介を睨みつける。ケラケラ笑う圭介は私に手を差し伸べると軽々ベッドから私を降ろした。

「…たんこぶ出来たかも」
「そんくれぇで出来やしねぇよ。つかもうオレ我慢出来ねぇんだけど」
「あっ!?」

トスンとそのまま畳の上に寝かされて圭介は私にキスをする。圭介の顔付きとギャップがある柔らかいぷにっとした優しい感触につい笑みが零れてしまった。

「なに笑ってんだコラ」
「えへへ…勉強は?」
「お前のパンツ見たら集中出来なくなったんだよ!責任取れや」
「えぇー?私が寝てる間ずっと何してたの?」

からかうように言ったのが彼は面白くなかったようで、少々乱暴気味に制服に手を掛け脱がしていく。勉強を頑張っていた圭介に悪いけれど、やっと彼が私のことを構ってくれるのが嬉しい。下着姿にされた頃には彼の瞳は狼のようにギラつかせていて、私は結構この顔が好きだったりする。お腹の下がきゅうんと熱くなるのを感じて、それと同じく背中に畳の冷たさがひんやりと伝う。

「…けーちゃん、まってまって」
「ンだ今更。最初に誘って来たのはなまえだかんな」
「や、そうなんだけど、畳痛いし冷たい」
「はぁ?…あー」

ボタンがいつの間にか外され少しはだけた彼の体に今度は胸の奥がきゅうんとなった。圭介は髪を掻き上げ少し考えた素振りをしたかと思うと、ニヤァッと笑い犬歯を見せると同時に私の体は起こされ反転する。見下ろされていた筈の圭介を今度は私が見下ろす形、つまり圭介の上に私は跨らされてしまった。

「ちょっ、布団下にひけばいいじゃんっ」
「たまにはいーだろこういうのも。これならお前冷たくねぇし痛くねぇし一石二鳥」
「…一石二鳥の使い道間違ってない?ソレ」
「あ"あ"?知んねぇよそんなもん」

まるで覚えたての四文字熟語をドヤ顔で言われても、とふふっと笑えば、私の腕はグイッと彼に引かれて噛みつくかのようにキスをされた。寒い部屋に圭介の熱い舌が私の舌を絡めとって唇が離れれば私の顔は火照り染まる。

「…下からオマエ見んのもいーな」
「……変態」
「男は皆変態だっつの」

圭介の大きな手が私の頭を引きもう一度深いキスを落としてゆく。だんだんと思考回路がぼんやりとしていく中で、私はやっぱり彼が最高に格好良くて好きだと実感するのだった。



20211104
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