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おそい、おそい、遅すぎるんだけど!

今日はマイキーと久しぶりのデートをする筈だった。私の部活が忙しくて中々ゆっくり時間が取れなかったのだが、今日は数週間ぶりの一日オフ。この機会を逃してはいけないとマイキーとデートをする約束をしていたのだ。
約束の時間は11時。しかし部屋の時計を見ればもう既に時刻は13時を少し過ぎている。30分程度の遅刻ならまぁ仕方が無い。1時間もまぁ許す。良くはないけど、これは過去にもあった。だけど…だけど2時間はないでしょうよマイキー君!

メールをしても返信は無し、電話を掛けてみても呼出音からマイキーの声に変わる事は無かった。
今日のデートの為に私は朝から早起きをしてメイクを施し、髪も慣れないコテで頑張って巻いた。マイキーが前に似合っていると褒めてくれたワンピースに着替えて出掛ける準備は万全だったのだが、何せ彼から待てど待てども一行に連絡が来ない。
凄く楽しみにしていた分、こうして連絡も取れないとなるとショックから段々と私の中でふつふつと怒りが湧いてくる。
理由は察しがついていた。昨日最後に電話した時、「これから皆でバイクで走りに行ってくる」とかマイキーが言っていて、電話の背後からは何台かのバイクをふかすような音が聞こえてきた。時間も時間だったし何となく嫌な予感がして、明日は寝坊しないでねって釘をさしておいたのにやはり的中したらしい。絶対マイキーは寝ている。彼は一度寝ると中々起きられないタイプだから誰かが起こすまでずっと寝ているだろう。私は息を深く吐き、マイキーの家へと向かった。







マイキーの家に着くと、外でマイキーのおじいちゃんが洗濯物を取り込んでいる最中だった。おじいちゃんの元へ駆け寄り軽い会釈と共に挨拶をすれば何度か訪れている私に、にこやかに「いらっしゃい」と出迎えてくれた。マイキーのおじいちゃん、優しくて好きだなぁと暖かい気持ちになるとほんの少しだけイラついていた気持ちが収まったような気がした。

母屋とは別のマイキーの部屋に行けばビンゴ。やっぱり彼は寝ていた。手触り良さそうなフカフカの布団にくるまって、俺の命といつも言っている毛布を掴みながらマイキーはスヤスヤと寝息を立てて寝ている。赤ちゃんのように気持ち良さそうに眠る彼の顔を見ると、つい気を許してしまいそうになるのだが今日の私はそうもいかない。

「マイキー!おきてっ!!」
「フガッ」

くるまった布団を勢い良くはければマイキーは驚いたように目を開けた。

「んっだよ!!まだ寝てんだ…ってあれ?なまえ?」
「そーだよなまえだよ。…マイキー君、今何時でしょう?」

携帯の画面を開き彼の目の前にズイッと時刻を見せれば、マイキーは硬直して目をパチクリとさせた。分かりやすく動揺するマイキーの背後には"やっべぇ"の文字が浮かんで見える。そんな彼に私はポツリと呟いた。

「…寝坊しないって言った」
「…わりぃ」
「今日のデート、私めちゃくちゃ楽しみにしてたんだよ?」
「うん…ゴメン」
「きょっ今日の今日は許さないんだからね!?マイキーの為に髪もメイクも頑張ったのに!服だって前に可愛いって言ってくれたの着てきたのにっ」

素直に謝る彼に、いつもの私ならもうとっくに許してしまっている所だろう。だが今日はずっとずっと楽しみにして来た日だったのだ。待たされた分、これぐらい言ってもバチは当たらないだろうと私は口にする。するとマイキーは私を上から下までまじまじと見てニッコリと笑った。

「あ、マジじゃん。うん、すっげぇ可愛いね」
「はい?」

マイキーはそう言うと私の腕を取りベッドへ引き込んだ。「わうっ」と可愛げの無い声を漏らし、私はそのままマイキーの座っている膝へと体がすっぽりと丸め込まれてしまった。

「わ、わたし怒ってるんですけど!?」
「俺の為にこんな可愛くオシャレしてくれたんでしょ?…ほんとゴメンな」

私の腰を抱いた手は離さず掴んだままマイキーは自分のおでこを私のおでこに当てて、眉を下げて私に謝る。そんな子犬のような瞳で言われたらこれ以上何も言えないじゃんか。私の心のパロメーターは怒りの沸点が一気に下降していって、愛しい気持ちが一気に膨れ上がっていった。本当この人は私の弱みを知っている。こんなマイキーを見れるのはきっと私だけで、私だけが知っている彼の姿であると思うと許さずにはいられない。
私はマイキーの肩に顔を擦り寄せ、ほんのちょこっといじけた素振りで口を尖らす。

「じゃあぎゅってして」
「ぎゅう?んな事で許してくれんの?」
「うん。ぎゅうってしてくれたらもういいよ」

私の望みにお易い御用と言わんばかりにマイキーは私を抱き締めた。ぎゅぅうっと力強く抱き締める彼の腕は逞しくて、力強い。あんなに私怒っていた筈なのにもういいやとなってしまうのだから流石はマイキーだ。

「なぁなまえ」
「ん、なぁに?」

抱き締めた腕の力が緩むと同時にマイキーは私をベッドへと押し倒した。ポフンと音を立てて少し軋むベッドにマイキーが寝ていたせいか彼の香りが私を纏った。

「あ、あの、どうしたのかなマイキー、くん?」
「可愛いお前見たらシたくなっちゃった」

にんまり口角を上げ笑って私を見下ろす彼は、先程の可愛らしい子犬の様な欠片は微塵も無かった。彼の言動に私は慌てて仰向けから体制を変えようと身じろいする。が、目の前のマイキーはすぐ様それを拒否して呆気なくまた元の体制に戻ってしまった。

「わっ私そんなつもりじゃっ」
「えー、俺の為に彼女がこんな可愛くしてくれたのにそれに答えなきゃ損じゃん?ダメ?」
「ダメっていうかなんて言うか…」

えっちしたくてお洒落した訳じゃないよマイキー。そりゃ確かにマイキーの為にお洒落はしたけどさ。答える所、違うのよ。
私が中々渋っていたのが面白く無かったのか、彼は少し考え私に言った。

「じゃあさ、エッチした後お前の好きな所に行こっ?」

そう言うと彼は私のワンピースをするりと撫でる。

あ、コレ今日もう何処にも出掛けられないパターンの奴だ。

マイキーのニッコリと笑う罪の無い笑顔に私はそう確信した。
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