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「マイキーまた私のお菓子食べたでしょ!」
「しっ知らねーし!つか机に置いとくのが悪くね?あんなん食べてって言っているようなもんじゃん?」

昼休み。同じクラスの佐野万次郎に対し、私はご立腹だった。何故なら私が食べようと楽しみに置いておいたブラック〇ンダーが完璧に姿を消している。犯人は直ぐに分かった。人の机からお菓子を平然と食べる男なぞ一人しか居ない。しかも、口元にチョコまでご丁寧についている。

「いやいや、そこ私の机だから!普通食べないでしょ!朝から楽しみにしてたのに!」
「んじゃ置いとくなよな」
「トイレ行ってたんですーっ!」

私達のやり取りにクラスの皆も呆れたような視線を私達へと向ける。こんな事は今に始まった訳では無く、私達にとっては日常茶飯事の光景なのだ。





「聞いてドラケン!またマイキーが私のお菓子盗んだ!」
「五月蝿いなぁ。一々ケンチンに毎回告げ口すんなよ」
「どぉでもいーけど二人ともまじでウルセー」

放課後の帰り道。マイキーを迎えに来たドラケンに私は彼の悪行をこうして告げ口するのが日課になっていて、それに伴いマイキーと小さな喧嘩に発端する。
本当どうしてかは分からないがマイキーと中学校生活三年間同じクラスになるという極めて珍しい事態に沿って、自然と話すようになり今の関係が出来た。
私とマイキーがぶぅぶぅ口を尖らせながら言い争いをしていると、ドラケンが指を指し何かを見つけたようだった。

「マイキー、あそこにたい焼き屋来てんぞォ」
「お!まじで!?買お!」
「あ、ちょっと待ってよ!」

走ってたい焼き屋まで向かうマイキーに、私も走って後を着いて行く。たまに帰り道にこうしてたい焼き屋が来ていると、マイキーは嬉しそうに100パーセントの確率でたい焼きを買うのだ。

「おじさんたい焼き4つ頂戴」
「ハイよ!」

たい焼き屋の主から暖かい袋を手渡されご機嫌なマイキーは、先程の私との喧嘩なんかもう忘れてしまっているようだった。別に私も本気で怒っている訳では無いし、何せマイキーのご機嫌な顔付きを見ているとまぁもういっかという気持ちへとシフトしていく。
紙袋からは美味しそうな甘い匂いが漏れてきて、たい焼きのお腹のアンコが無性に恋しくなってしまった。私も買おうと思い早々に財布の中身を覗いたら残念極まりない。お金が足りない。今朝登校する前にお菓子と雑誌を買ってしまった自分にトホホと軽く後悔し、私が財布をしまうとそれを見ていたマイキーが一匹のたい焼きを紙袋から取り出し私に差し出した。

「ん、やるよ。これでチョコの件チャラな」
「いいの!?やったぁ!ありがとうマイキー。チョコの件はもうどうでもいいです!」
「なまえチョロすぎねぇか?」

若干ドラケンが苦笑いを浮かべていたような気がするが、そこは見て見ぬふりをして私はもらったたい焼きを口へと運び頬張った。

「あまぁい〜」
「うめェよなぁ」

近くの土手に腰を降ろし、私達はたい焼きを頬張る。如何にもアオハルって感じがして、制服着てこういう事するのって嫌いじゃない。あっという間にたい焼きは食べ終わりお腹は満たされ満足だ。そんな私達を横で見ていたドラケンはサラッと疑問をぶつけてきた。

「お前らってさ、実は仲良いよなぁ?」
「「そう?」」
「おいおい、ハモってんじゃねぇか」

仲が良い?そう言われてふと考えてみる。確かにマイキーとは何だかんだ口喧嘩になってもこうして良く遊ぶし、何より楽しいという気持ちが上乗せし一緒に居て気が楽なのは確かだ。

「まぁクラス三年間一緒だしねぇ」
「それな。席替えもお前と隣に何度かなったよな」
「あったあった」

そんな私達の様子にドラケンは首を傾げているのを事知らず、数年前の昔話に花を咲かせる。
こういう話をすれば、私の中学生生活全てにマイキーが居るんだなぁとふつふつと感じ取れた。

「んじゃそろそろ集会行こうぜ」

ドラケンの言葉に気付けばいつの間にか夕方から夜になり掛けてて、時間はあっという間に過ぎていく。私もそれならば帰ろうと地面から腰を上げた。

「オイ。なまえも来んだろ?」
「私?んーどうしよっかな」

ドラケンにそう言われ少しだけ悩む。今日は帰ったらやる事があった。それは勉強なんかである筈は無くゲームだ。只今絶賛モン〇ンにどハマりしている私は、ランクを上げるために精進している最中だったのだ。

「あー今日は」
「いーじゃん。何もねぇだろ?なまえも来いよ。けって〜い」
「強引過ぎじゃん」

私が断りを入れようとした瞬間、マイキーは私の言葉の続きを聞く前に私も集会へ行くことを強制させた。
マイキーはよく私を集会へと連れていく。女の私なんか行ったってする事は無いし、寧ろ邪魔にしかならないだろうに誘ってくる。私も私でいつもそれを大体了承してしまう。ニッコリと笑うマイキーにそう言われると断れないのだ。その笑顔にぶっちゃけ弱いという自覚はある。





いつもの神社へ着くと私は早々にマイキーと離れて、地味に隊の人達の邪魔にならないようにこじんまりと木にもたれ掛かる。マイキーは前にそんな私を見て「なまえも俺の隣に居ればいーじゃん」とか言われたけど、有り得ない。失礼だがあんな見るからに顔面怖い方達の前に私が立つなんて恐れ多いと断った。するとドラケンが「お前がいつも愚痴愚痴言い合ってんのはその顔面怖いヤツらより怖ェ総長だけどなぁ」なんて言われてしまったけれど、それとこれとは別物だ。

「集会始めんぞォ」

ドラケンの一声に東卍の隊員達は皆スっと姿勢を正す。この緊張感に私もついいつも釣られて背筋を伸ばしてしまう。

「今日集まったのは最近出来たらしいチームの件についてだ」

皆の前で声を張るマイキーに私は毎度かっこいいなぁと素直に思う。私が普段見ているマイキーは、悪戯好きで甘いものが好きでちょっとした事で頬っぺを膨らまして怒るような少年だ。それなのに総長のマイキーは全然違う。男らしくて威厳があって皆の上に立ち憧れられている存在だ。どちらも同じマイキーなのに不思議な感覚。だから私は集会へ来るとついついこうして彼を魅入ってしまうのだ。





「お疲れ様〜」

集会が終わりチラホラと人が掃けていくのを確認し、私は特攻服を着てバイクに跨るマイキーの元へと歩み寄る。

「なまえまーた木のとこに居たろ?こっちに居りゃいいって言ってんのに」
「いやいや、私そもそも女だしめちゃくちゃ浮くし場違いじゃん」
「ハハ、それは間違いねぇわ」

それなのに何故マイキーはいつも私を誘うのだろうか。そこの所気にはなるけれどまぁ多分三年間分の友達の好という所であろうか。

「この後何すんの?後ろ乗っけてやろっか?」
「いや、今度でいいよ。この後は速攻帰ってゲームするの。今日こそリオ〇ウス倒してランク上げる」
「あ、マジ?俺もやる。じゃあお前っち寄ってやるから荷物とってその後家来いよ」
「おお!久々やっちゃう?いーね賛成。じゃあDVDも借りよ。ゲーム飽きたら見ようよ怖いやつ」
「さーんせい。コンビニも寄って菓子も買ってくか」

今からのスケジュールが決まり、マイキーからヘルメットを受け取ってバイクに跨ろうとしている所でずっと隣で空気化していたドラケンが私達に話し掛けてきた。

「待て待てマテ!お前らって…そういう関係だっけ?」

そういうカンケイ??
私とマイキーは目をドラケンからお互いへと移す。そのハテナを頭に浮かべている私達にドラケンは信じられんと大きなため息を付いて眉を下げる。

「あー…俺の聞き方がおかしかったわ。お前ら付き合ってんの?」
「「いや?付き合ってない」」
「まぁたハモってやがるよ」

マイキーと手を顔の前でヒラヒラとさせながら否定すれば、ドラケンは呆れたように再度溜息を付いた。

「付き合ってねぇのにこんな時間に女を家に連れ込むのかよ。じゃあ聞き方変えるわァ。マイキー、お前なまえが他の男とこれから家でゲームしながらDVD見るっつったらどーするよ?」
「ハハ、何言ってんのケンチン。そんな事許すわけねぇし速攻連れ戻すに決まってんじゃん」
「……なまえわぁ?」
「私?えー私も許さないかも。オイ!私がいるだろって」

ドラケンは額に手をやり頭を抱える。そして私達に言った。

「…ソレってお互い好き合ってるって事なんじゃねーの?…あー、恋愛的な意味で。ぅんだよお前らそんな顔して…え?俺が違ぇの?」
「「…………っえ!?」」

言葉の意味を理解した私とマイキーは目を合わせ、お互いの顔が赤らめるのも時間の問題だった。
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