信じたい、信じたくない
嫌な夢を見た。いつもつるんでる、所謂幼なじみ殿に告白される夢。しかもキスまでされるどきついヤツ。…大きなバケツを用意してもらっていいだろうか。充分に吐き気はもよおしているのだから。
そっと瞼を上げる。…なんてこった。顔が、眼が、文字通り目の前にある。息が詰まる。だけど口を開ける訳にはいかない。絶対にコイツ、シャンクスの思う壺になる。と言うより何でキスされてんだ?理解不能。ああもうクソったれ!離れろよ!
顔をこれでもかと横に背け、重なっていた唇が擦れて離れる。
「なにしやがんだ!!変態野郎!!」
ジタバタと暴れて、なんとか押さえつけられていた両手を魔の手から振り払う。上半身の自由は取り戻すことに成功した。対してシャンクスはあー…と残念そうに声を上げただけだった。
「変態なんてヒデーな。」
「男に…きっ、キスするヤツは変態じゃねえってか!」
「バギーが好きだからしたんだよ。うん、やっぱいいな。」
うんうんと顎に手を当てながら頷く、シャンクスに
「ふざけんな!!」
とわなわな震えていたバギーは、拳を喰らわせる。見事に顔にヒットしたお陰で、シャンクスに一瞬の隙が出来る。それをバギーは逃さず見つけ、スルリと足を抜いた。
「冗談でも次言ったら派手にぶっ飛ばすからな!!」
と叫んだ後、逃げるように走り去った。一人残されたシャンクスは、バギーが走って行った方向を名残惜しげに見つめる。
「冗談じゃねえっつの。」
ふと自分の口に眼を落とす。先ほど触れ合っていた唇をペロリと舐めた。
「…甘い。」
そう言って綺麗な弧を浮かべた。
わざとらしく大きな音を立ててドアを閉めると、そのまま頭からベッドに倒れる。出来事は数分だったハズだが、疲労感は普通数分で味わえるものとは比にならない。心臓は未だ高く鐘を打ち鳴らしていて。走ってきたせいではないのは百も承知だった。
「意味、分かんねぇよ…!」
分かったことは今までとは同じではいられないと言う、受けられがたい現実だけだった。
(想い、模索してみれど)
title:終焉