孤独に咽ぶ子供

王と呼ばれたその青年が何を思い、彼女に興味を見せたのだろうか。初めて戦ったとき、Nは心底驚いていて。そして再び対面した今も不思議で仕方がないと、ホワイトを凝視している。

「君のポケモンたちは変わっているね。いや、君が変わっているのか?」
「何が?」
「君といるポケモンはいつも幸せそうなんだ。何故かな。」

信頼しあえる者同士と共にいて、幸せではない者などいないはずなのに、彼は何故と問う。彼は共にいることが不自然だと思うのだろうか。なら彼女よりもポケモンといたはずの彼はどうなるのか。その彼の言い分が彼女には酷く矛盾してみえた。

「分からないだなんて。悲しい人だね。」
「そうかい?」
「ええ、とても。あなたはこの子たちの声が聞けるのに。」

そう可哀想なのだ。共にあるのが当たり前であるのに、それが理解できない。何よりそれは彼が一番してきたことのはず。そっとホワイトはNの手を取った。抵抗せぬまま彼はホワイトの動きを眼で追った。手のひらを重ね合わせてみせると、彼女は出来る限り優しく視線を合わせる。

「こうやって別々のものが触れ合って初めて、何かが生まれるんだよ。それは人もポケモンも同じ。それは辛くて苦しいことかも知れない。でもね、それだけじゃない。あなたはこの合わさった手に何を感じる?」
「ホワイト…。」
「あなたにも私が持ってるものを知って欲しいし、共有したい。」

Nは物憂げに重なり合う手を見つめ、ふいにその手を引いた。その手は繋がれたまま離れることがなく、ホワイトが彼の胸に飛び込む形で収まった。狂いなく鼓動を刻んでいた彼女の胸は飛び上がった。未だ幼い彼女にはまだ免疫のない行為に思考が追いつかない。声にならない音を漏らす彼女の頭上から、零れるように言葉が降る。

「こうすればもっと伝わってくるよ。君の温かい感情が。」

そう言うと回されていた腕がさらに力強くなった。熱がゆっくりと伝うように、彼の中にある葛藤や、貫きたい信念が流れ込むようだった。ホワイトは怖ず怖ずと回した腕で背を撫でる。いつしか彼の心から漏れ出した嗚咽に、彼女もまた涙を流した。


《あなたの心を埋めたいと願ってしまうのです。》


(N主♀)
20101010




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