少女の遺書(恋文)

私は夢が嫌い。何でも上手くいくわけでもないのに、そのクセ砂糖のように甘ったるいのだ。あくまで脳が生み出した荒唐無稽で絶望を飾り付けた洋菓子。それを肥満児さながらに貪る私という存在にも嫌気がさした。

(消えて無くなればいいのに。)

夢の中は生暖かい。羊水に沈む胎児のように甘んじている私は、いつか夢に食され死ぬのだろう。死が恐ろしいのではない。自分という存在が無くなるのが恐ろしいのだ。認識出来ないと認識している自我でさえ、削り取られ腐り落ちる。

(もういっそのこと)

夢が嫌いな私は夢に護られ、夢に溺れている。夢は甘さを孕んでいるというのに、どこか現実と繋がっていて残酷だった。それでも私はすがりつく。そこに願った楽園が現れると、何も知らない無垢な赤ん坊のように信じてやまないのだ。さながら神に群がる信者。死骸にたかる蟻。

「夢、貴方に恋文を送ろうと思うの。」

大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き…大嫌い。
大嫌いな貴方へ遺書(ラブレター)を捧ぐ。そうして私は夢を殺すことにした。もっと早く気づけば良かった。次の日夢は現れなかった。至極簡単な話。夢を見る脳髄なんてどこかに飛び散ったんだもの。

…とある少女の日記より一部抜粋。


(窓付き)
20100715




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