ベゴニアを贈ろう

※ビリーとレベッカが同棲してます。

白い紙を目の前に私、レベッカ・チェンバースは悩んでいる。その紙に綴らねばならない事柄を認めたくなかった為だ。しかしこれを提出しない限り、彼の安全を保証することが出来ないことも事実だった。そんな悩む私に気づいたのか、いつの間にか隣でビリーが私を見つめていた。

「別にそんなに重く考えなくてもいいんだぞ、お嬢さん。」
「お嬢さんって呼ばないでってば。これを出すのは重要なことよ、簡単に言わないで。」

軽く肩を竦ませたかと思うとビリーはゆっくり椅子にもたれた。ビリーとは一度別れたが洋館事件後、ひょんなことから再会し私の家にて匿う形になっている。出会ってから彼に惹かれていた私はエゴだと分かりつつも、彼に私の家に住むように薦めたのだ。そしてそのままでは彼は依然として追われる身である為、とある措置を取ろうとしていた。それが今、私の目の前にある彼の“死亡届”だ。これを出してしまえば晴れて追われる身でなくなり、この世界に捕らわれない人間になる。だが出すと共に、彼に死を与えることになる。出会った時は軽蔑したが、今では愛する男である彼を死人にしてしまうことが嫌で仕方なかった。彼は今正に私の目の前で生きていると言うのに。彼に罪などないのに。けれどその身勝手な思いから、未だ提出出来ずにいるのもまた、私のエゴに過ぎない。そしてここ三日ほど堂々巡りを続け、この紙と対面し続けていた。

「ビリー。アナタは今から書類上だけど、死んでしまうのよ?本当にそれでいいの?」
「…気分が良いものではないな。」
「他の方法を考えても良いはずよ?」
「かも知れないな。でもこれが一番安全だ。政府もわざわざ死人を目くじら立てて探し回らないだろう?しかも精鋭部隊S.T.A.R.Sからの届けだ。疑われやしないさ。それに…。」

ビリーは私の胸元にあったドッグタグを持ち上げた。それは彼の海兵隊時代の象徴でもある。

「これをレベッカが持ったときに、もうオレは死んだんだ。あの事件に関してオレに罪はないとレベッカは言うだろうが、少なからずオレにも罪はある。そしてこの罪の意識がオレには必要なんだ。だから昔のオレに“死”を与えて欲しい。これはオレ自身へのケジメでもある。」

そう言って彼はドッグタグを離した。過去の自分に対するケジメ…。ビリーは語る間はただドッグタグを見つめていて、その決心の頑なさは見ているだけでも伝わった。私はビリーを抱きしめた。ただその時は思うがままに行動しただけだったけど、抱き返してくれたことで彼の心の内が分かった気がした。

そして私はその日彼の死亡届を出した。家へ帰るとビリーが笑顔で待っていてくれて、私も笑い返した。彼は死んだ、でも今私の目の前で笑いかけてくれる。それが全てだ。


《アナタと幸せを紡いでいけるから。》


(ビリー×レベッカ)
20110326


後書きです。今回の文は今度こそ、へろさんリクエストのバイオ0です。CP要素を含んでしまって少々やらかした感がありますが見逃してください(汗)タイトルになっておりますベゴニアの花言葉は“幸福な日々”だそうです。他にもあるそうですが…。解釈はそのまま受け取って頂ければと思います。今回の話はビリーが死ぬ話ですね。…極端に言えばですが。もしへろさんのお気に召さなかった場合は、また何か捻りだすかも知れません。技量的に余り期待できないですが…すいません。リクエストに答えられたかかなり不安ですが、暇つぶし程度になれば幸いです。リクエストありがとうございました!!




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