恋するLunatic

さてそこにあるゴミ箱には私の大好きなものが詰まっている。言うなれば彼の欠片であった、かすみたいなもの。でもとてもじゃないが金銭云々で手に入れられるものではない。だからこそ私は手を伸ばす。どうか彼がゆっくりと歩を進めますように。途中の階段なんかでこけてしまったりして。そう思って小さく笑えば、階段下から床の軋む音が聞こえた。あらいけないこうしてはいられない。早く早くと自分を急かし、私の手はゴミ箱を掻き分けていく。ああこれは絶対に必要。取り出したのはさっき彼が切って捨てた爪。私の目の前でパチリパチリと小気味よく音を立てながら落ちていた彼の分身。その小さくティッシュにくるまれたソレをポケットにしまう。大事に使用するためだ。勿論彼にそんなこと言ったことは一度もない。変な女だと嫌われてしまうかも知れない。それは絶対に避けなくちゃ。でも今日は本当の私を知ってほしいから。階段を上る音がする。さあさあ楽しい時間は終わり。早く早く、彼に私の変わった趣味を伝えなきゃ。きっと彼なら受け入れてくれる。


その少年が自室の襖を開けると、机の脇に置いてあるゴミ箱が散乱していた。中からは先ほど少年が捨てた爪も無く、ちょっとした学校から配布されたプリントなども無くなっていた。驚いた彼がそばによると、中に残っていたのは満面の笑みを浮かべ、少年が捨てた爪を平らげる見知らぬ女が写った写真だった。


《愛しいアナタ、大好きよ》


(ある少年とストーカー女)
20101220


title:Aコース
Lunatic(精神異常者)





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