リレー小説 | ナノ


  04


【Write:すう】

すごい...僕今生まれて初めて、こんなに人に囲まれてるかもしれない。

そんなことを思いながらウィリアムは数人の少年に囲まれて座っていた。
「チーズバーガー?それなら、近くにお店があるね。善は急げだ。放課後、行うか。」と誘われて来たハンバーガーショップは雰囲気こそ落ち着いていたものも、母国の様子となんとなく似た感じだ。それには安心した。

だが、この状況はまったく安心できない。

「なぁ、外国ってどんな感じ?やっぱり自由の国?スーパーマン飛んでる?」
「あれ、ウィリアムくんって外国人?なんだよね?何で僕たち普通に喋れてるんだろ?」
「シッ霞!それ、暗黙の了解ってやつだから、触れちゃいけないやつだから!シッ!」
「えっ、でもそんな、」
「そうだ!ウィリアムくんの愛称ってウィル、だったよね?もうそっちで呼んじゃっていい?ウィリアムってロレツ回りにくいんだ。」
「なんかミディアムみたいだねー」
「かすみん!シッ!」
「あーっ!おいっ!優!それ俺んだから!俺のコーラだから!」
「あっヤベ、間違った」

言葉が、四方八方から行き交っている。大渋滞だ。
元々コミュニケーションが苦手なウィリアムは、何も喋れずにただただ頷くか首を振るかその二つの作動しかできずにいた。
おどおどとしていると隣に座っている、比較的に落ち着いた様子の卓弥が「大丈夫?」と心配そうに訪ねてきた。

「…いつも、こんな感じなの?」
「うーん…まあ、ちょっとはしゃいでると思うけどね。こんな感じかな。」
「そうなんだ…」

少し驚いて唖然としてしまう。すると、ウィリアムの前に座っていた霞がこちらに気付き、おずおずと心配そうに口を開いた。その隣では、千尋と優がジュース勃発戦争を繰り広げている。

「・・・オレ達、うるさかった?やっぱり、友達、ダメかな?」

霞のそんな言葉に「えっ!?」と思わず声をあげた。隣を見ると申し訳なさげに苦笑する卓弥がいる。
ウィリアムは手元においていたジュースが倒れそうになる勢いで声を上げた。

「そっそんなことない!!」

その声に、ジュース勃発戦争の勝利の旗がやっと掲げられようとしていた千尋の優の二人も、なんだなんだとこちらを向いたほどだ。

そう思ったのは本当だ。
馴れない場所で、しかも一人でなげだされてしまった場所でこんなふうに声をかけてもらえるとは思ってなかった。自分の名前に興味をもたれるとは思ってなかった。意味を知ってもかっこいいと言ってくれて嬉しかった。友達になろうと言ってくれて嬉しかった。
確かに、ついていけずに混乱はするし正直帰りたくもなったが、なによりこの仲の良い4人が、ウィリアムはとても羨ましいと思った。

「・・・ そんなことないんだ、ただ馴れてなくて…こんなふうに大勢の友達と遊んだことないんだ。友達も、少ないから…ありがとう。いっぱい、気遣ってくれて、嬉しいよ」

いっぱいいっぱいに笑うと、4人は顔を見合わせてキョトンとして

「「「どういたしまして!」」」

と歯を見せて笑った。
ウィリアムはホッと安心して自然と微笑んだ。
すると隣で卓弥がジュースを手につけながら

「うん。どういたしましてっていうか、元々僕たちのテンションのせいでこうなってたわけだから、プラマイゼロだよね」
「阿部くんったら冷静ね…」

千尋と卓弥がそんなやりとりをひっそりとしたところに定員が頼んでいたハンバーガーを持ってきた。

「あっ、ありがとうございます」

卓弥が受け取り、机の中心に置いた。色とりどりの包み紙に包まれたハンバーガーがトレーの上に並べられている。

「うおーやっと来た来た!」
「ジュース半分飲んだんだけど」
「はやいな!?」

あれやこれやと声が行き交うと卓弥がそれぞれにハンバーガーを配っていく。

「はいはい!俺、普通のバーガー!肉肉!」
「はいはい!オレ、コロッケバーガー!コロッケコロッケ!」
「はっはいはい!ぼ僕、チーズが入ったやつ!チーズチーズ!」
「お前ら落ち着け。」

そんなやりとりをしていると優がふと席を立った。ハンバーガー!と騒いでいる千尋・霞・ウィルを前にそれぞれハンバーガーを投げ渡した卓弥は不思議そうに優を見上げた。

「優くん、お手洗い?」
「うんや、オレンジジュースのおかわり貰いたい。確かおかわりできたはずだよな」
「あ、僕も貰いたいなぁ」
「じゃ、行くべ」

卓弥と優が席から立つと、ふと見知った顔が目に入った。

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