03
【Write:マーライオンさん】
「友達になろう!!」と目を輝かせて言った霞を物珍しげな顔で見つめるウィリアム。
ウィリアム以外のメンバーは友達になるのかならないのかの返答を待っているようだ。
…しかし、あまりにもギラギラとした目でウィリアムを見るのでウィリアムはすっかり怯えている。
「…あー、ほらほら、みんな!」
卓弥が手を叩いて自分に注目させる。
「そんな猛獣みたいな目でウィリアムくんを見ちゃだめ。怖がってる!」
すると、はっとした表情で千尋が自分の顔を手で隠す。
「ごめん!もともとこういう目つきの悪い顔してるんだっ!!」
「…あーあー、ちーさんが怖がらせたー」
「やっちゃったねー」
ウィリアムは思った。
本当に、何なんだ、この人達。
そんなくだらないことを言っているうちに、授業開始のベルがなった。
「ほら、席に着かなきゃ。」
「もう授業かぁー」
「なんだっけ、なに勉強すんの?」
「英語だよ…」
うわー、と言いながら、彼らは何事もなかったかのように自分の席に戻って行った。
「…なんか、もう、帰りたい…」
ウィリアムは一言、そう呟いた。
授業は淡々と進み、お昼休みの時間になった。
ウィリアムは空腹を満たそうとバックからお弁当を出して、食べ始めた。
「あ、あのさ、ウィリアムくん」
「…?」
いつの間に来ていたのか、卓弥、と呼ばれていたメガネの少年が目の前に立っていた。
「…なに?」
「ちょっと、英語の時間暇だったからさ、ウィリアムくんの名前を調べてたんだ。」
授業中になにやってるんだ、と思ったウィリアムだったが、口には出さなかった。
「間違ってたら申し訳ないんだけどさ…ウィリアムって名前、元は古代フランスのWilhelm(ウィルヘルム)っていう名前が変化した形みたいだね。…短縮系のWil(ウィル)は、希望 という意味だし。ウィルヘルムhelm⇒helmet(ヘルメット)…語源でProtection(守護)って意味だよね?全部ひっくるめるとさ、ウィリアムって名前は"英雄的な守護者"!!」
ウィリアムは唖然とした。
自分にそもそも興味を持ってくれる人がいることに驚くし、そこまで調べてくるなんて…。
「かっけー!!英雄!守護者!!」
「かっこいいねー!!」
「そういう名前羨ましいなー、英語かっこいいなー」
卓弥とさっき一緒にいた他のメンバーもいつの間にか集まっていた。
そして許可もとらず椅子をウィリアムの席の周りに置き、お弁当を食べ始めた。
「やっぱり友達になろう!!」
「うんうん。」
「なんか今度どっか食べに行こう!」
「それいいねー。」
「…あのさ、名前の話なんだけど…僕には似合わない名前だよ、英雄とか守護者とか…全然そんな感じじゃないし…」
「え、別にそんなことは気にしないよ?」
「そうそう、ウィリアムくんはウィリアムくんだし。」
霞と千尋が淡々と言う。
ウィリアムは黙り込んだ。
すると、卓弥が口を開いた。
「それよりさ、ウィリアムくんは好きな食べ物とか、ある?」
何とも言えない、不思議な気持ちに戸惑いながらも、ウィリアムはおずおずと答えた。
「………チーズ、バーガー…」
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