01
【Write:ソラさん】
朝。
時計の針は8時15分を過ぎた、眩しい朝日が射し込む教室。
その一角で、一人の少年が退屈そうに頬杖をついていた。
「つまらん」
「おはよう、ちーさん。……どうしたの」
眼鏡をかけた小柄な少年が、千尋の覇気のない様子を見て苦笑を零す。
その後ろから、2人の男子がわぁっとやって来た。
「ちーさんおはよ! なになに、恋煩い? 相手誰よ?」
「あ、慎ちゃんはダメだよ。ボクが独占してるんだから」
「優、藤崎先生は皆のものだよ!」
「お前ら朝からうるせぇ!!」
くわっと千尋が吠える。
それを意に介さず、ヘアピンがトレードマークの霞が口を開いた。
「で、今日はどうしたの? いつものテンションじゃないじゃん」
「ちーさん、退屈なんだって」
千尋の代わりに卓弥が答える。
深い溜め息をついた千尋は、大仰に肩を竦めて再び頬杖をついた。
「なんかこう、ないかな。秘密の力を持った留学生とか来ないかな」
「ちーさん今度は何を読んだの」
マスクを付けた少年、優がそう言い切ると同時にチャイムが鳴る。
それから少しして担任が教室に入ってくると、霞たち含む生徒らは雑談を切り上げ、各々の席へと散っていった。
学級委員による号令の後、担任は教室の扉の外にいるであろう誰かに声をかける。
その後教卓へと戻る担任の傍にいる少年に、教室内がにわかにざわついた。
「今日からクラスメイトが増えます。ほら、挨拶して」
担任に促され、少年は渋々といった風に前へ出る。
視線はどこか居心地悪げで、不安そうに斜め下に注がれていた。
「……留学してきました、ウィリアム・カーターです。……よろしくお願いします」
そう言って、少年ことウィリアムは軽く礼をする。
その様子を見ながら、千尋は少し前の呟きがものの数分で実現したことに驚きを隠せないでいた。
「………………えっ」
ずるりと、千尋の黒ぶちメガネがずり落ちた。
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