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【Write:マーライオンさん】
きつく抱きしめられて苦しかった。
でも、この苦しさが嬉しかった。
だってそのくらい僕を好きだと言ってくれているようなものだから。
「ありがとう」
自然に口から零れた言葉は消えそうなくらい小さかったけれど、彼らは聞き逃さなかった。
「こちらこそだよ!」
その後は少し照れくさいね、なんてみんなで笑い合った。
「ウィリアムくんなんかあった?」
突然、卓弥が聞いてきた。
正直、ばれていないと思っていたからびっくりして呼吸が止まりそうだった。
「俺もちょっと気になってた。なーんか元気ないよな?」
千尋までもが気づいていたらしい。
他の2人もなんとなく違和感があったらしく心配そうにこっちを向いている。
「……ごめん、心配させて…」
言いたくなくて。
言えなくて。
でも、いつかは言わなきゃいけない言葉。
「…っ、僕さ!」
「席に着けー」
ウィリアムが喋り出した瞬間、先生が入ってきた。
「抹殺してやる…」
「ちーさん!?」
「やめたげて!!」
「…武器はなんにしようかー」
「「阿部くん!!??」」
ウィリアムが話し出したのに先生が来たら席に着かざるを得ない。
そんな状況にイラついた千尋と卓弥はなんだか怖い顔で恐ろしいことを言っている。
「あ、あとで話すよ!ね!」
ウィリアムがそう言って、やっと落ち着いたらしい二人はそれでもギラギラと先生を睨みつけながら「じゃ、昼休みに聞くね」と言いながら自分の席に戻って行った。
「……言いたく、ないなぁ」
みんなが席に戻った後、ウィリアムが呟いた。しかし今度は誰にも受け止められず消えていった。
「お昼だぁぁぁぁ!!!!」
「腹減った。」
「ウィリアムくん、お昼だよー」
「授業眠かった…」
それぞれいろんなことを言いながらこっちへ来る。
もう、こんなに時間が経ったのか。
とりあえずお腹が空いた僕たちはお弁当やらコンビニのパンやらを口にした。
「ウィルくん、ホントに大丈夫?」
「かっこいいお顔が台無しよ?」
「…そ、そんなに変な顔してる?」
「「「「うん」」」」
全員に頷かれた。
「さて、話を聞こうか。」
「ちーさん警察みたーい!」
「霞、うるさい」
はーいと返事をする霞によし、と頭をなでる千尋に、それを保護者のように見つめる優と卓弥…
「…寂しいなぁ」
「なになに?どしたの?」
霞が好奇心むき出しで言ってくる。それに少し笑いながら僕は…
「帰らなきゃいけないんだ」
と言った。
さぁ、彼らは最後に僕になにを見せてくれるんだろうか。
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