リレー小説 | ナノ


  12



【Write:ソラさん】

(諸事情によりすっちゃんはパス)

 翌日、ウィルは教室への廊下を一人でてくてくと歩いていた。
 一人になってから、僅かな不安が湧き上がる。
 母国で受けてきたあまりいいとは言えない扱いが頭を掠め、いつもの癖で頭に手をやった。
 しかし、そこにはいつもの帽子はない。
 日本の校則では、帽子を被ってきてはいけないらしい。
 制服も堅苦しいし、日本はなんて厳しいんだ。
 そんなことを考えながら、またいつジュースをかけられるだろうかとウィルの視線は徐々に下がっていく。
 それと同時に、わくわくしている自分もいた。
 彼らは、今日は何をするのだろう。
 そう思うと、自然に俯いていた顔が上がる。
 いつの間にか、教室の前だった。
 深呼吸を一つし、ウィルはがらっと教室の扉を開ける。

「あっ、ウィル来た!」

「おはようウィリアムくん」

「おっはー」

「ウィルくんおはよ!」

 ウィルの顔を見るなり、例の美術部メンバーはぱあっと表情を明るくさせて大きく手を振った。
 肩に力が入っていたウィルは息をつき、笑みを浮かべる。

「あ、ウィリアムくんおはよー」

「っ!? お、おはよぅ……」

「よっす」

 彼らの元へ歩み寄ろうとしたウィルに、クラスの人たちから次々と挨拶が飛んできた。
 母国ではまずなかった状況に、ウィルは戸惑う。
 それでも、きちんと挨拶を返した。

「ウィルくん人気だねぇ」

「格好いいもんね」

 すっかり友人となった卓弥たちの元へ行くと、霞がニヤニヤしながらウィルを見る。
 卓弥も頷いて同意を示し、そんな二人をウィルは不思議そうな目で見つめた。

「格好いい……? 僕が?」

「そうだよ!」

「そんな……ぼ、僕は格好よくなんかないよ。暗いし、取り柄も何もないし……それにぶみゃっ!?」

 更に言葉を紡ごうとしたウィルに、千尋の腕が伸びる。
 千尋はウィルの頬を両手でつまむと、そのままぐいっと横に引っ張った。
 彼の顔は、不機嫌そうに見える。

「ひ、ひひほふん?」

「ウィル、あんまり自分を卑下すると怒るぞ俺」

 ぱちくりと、ウィルは目を瞬かせた。
 ウィルの頬から手を離し、千尋は柔らかく笑いかける。

「俺たちは、友達になりたいから友達になったんだ。暗いだとかなんだとか、知らないよ」

 唖然とした表情で、ウィルは千尋を見つめた。
 やがて言葉を飲み込むと、ふわりと小さな笑みを浮かべる。

「……そっか」



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