リレー小説 | ナノ


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【Write:マーライオンさん】


楽しい時間、というものはあっという間に過ぎてしまうもので。

「あ、もうこんな時間だね。」

卓弥がぽつりと呟いた。全員が一斉に顔を上げ、時計を見る。

「…阿部クン…」
「え、なに、なんか変なこと言った?」

悲しそうな顔で千尋が卓弥を見ていた。それに戸惑う卓弥。
何かまずいことを言っただろうかと不安そうに眉根を寄せる。

「空気読んで。」
「は?」
「そうだよー、皆気づいてたけどあえて言わなかったのにー」
「あー、阿部氏ー…空気読める子だと思っていたのに…がっかりだよ…」

次々に文句を言われ、卓弥はもっと眉根を寄せた。
え、なんでこんな怒られてんの?責められてんの?と、言いたげな顔で。

「ちょっと待て、お前ら。阿部は悪いこと言ってねぇだろ。むしろ大事なことを…」
「慎ちゃんは黙ってて!!!」
「…はい。」
「いや!そこは黙らないでくださいよ!?」

珍しく(初めて?)優が慎に怒鳴ったせいか、楽しかい美術部の雰囲気が壊れていく。
みんなが、優を見ている。もしかして本気で怒っているのでは、と心配そうに。
すると、みんなの視線に気づいたのか、優がみんなの方を見る。

「…え、なんでみんなそんなにボクを見てるの?何、恋?モテ期きた?ボクに惚れちゃった?」
「え、怒ってたんじゃ…?」
「えー、怒るわけないじゃん?ちょっと言ってみたかっただけー!へっへっへ!」
「優くん、ちょっとそこに正座しなさい。ほら、さっさとして。」
「あ、阿部氏?顔…こわ…」
「はやくしろや」
「はいごめんなさい今すぐ!」

まぁ、あれは優が悪いだろうとみんなは呆れ顔で説教される優と説教している卓弥を眺めた。
そんな説教は5分で終わり、卓弥はやれやれといいながら、もといた席に戻った。

「…阿部氏…いいね、なんかこう…もっと叱って、っていうか…」
「優が恐ろしいこと言い始めたぞ」
「レッドカード」
「うわぁ…阿部クン…もしかして藤崎先生と同じ感じになるんじゃ…」
「ようこそ、阿部。歓迎するぞ。」
「そんな滅多に見せない笑顔で迎えられても嬉しくないんですけど。」

そんな会話をただ茫然と聞いていたウィルとギルはさすがに時間が6時になろうとしていたので、声をかけることに。
(さっきまでも何度か声をかけようかと思っていたが上手くタイミングが掴めず言えずにいた。)

「あーのー…」
「ん?ウィルくんどうしたの?」
「じ、時間が…さすがにそろそろ帰らないと…」
「あ、そうだった、忘れてた。」

ごめんごめんと霞が手を合わせて謝る。
その後、霞がみんなに声をかけた。

「ウィルくんとギルくん帰るってー」

その一言にみんなが反応し、バタバタ集まってきた。

「ご、ごめんね、あんまり美術部らしいとこ見せられなくて!!これでも一応部長なんだけど!!」
「杉ちゃん、気にしなくていいよ!おれも副部長のくせに何もできてないクズだよ!!」
「先輩たちはなんでそんなに自分を悪く言うんですか」
「「だってぇー!!」」

それを聞いたウィル、ギルの二人は口をそろえていった。

「「すっごく楽しかった。」」

とてもいい笑顔で、言った。
そんな二人に感動して美術部一同は二人に抱きついた。何度も二人にありがとうと言った。

(お礼を言うのはこっちの方なのになぁ)

そんなことを思いながら、ウィルはみんなを抱きしめ返した。
少し、頬を赤らめながら。
そんなウィルを見て少し笑ったギルも、楽しかったー!と言いながら美術部一同を抱きしめ返した。


きっと、明日も楽しいから。
だから、明日も来てね。
そう約束して、みんなで帰った。


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