リレー小説 | ナノ


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【Write:月狼さん】


頭を撫でてきたギルが二ヒヒと歯を見せて笑っている。
すると藤崎が腕を組んで皆の方を見て言った。

「さて、本題に入ろう。ここを見学したいという事だが、一体何をするか…」

「確かに何も考えずに連れて来てしまったね」
卓弥が困った顔をする。
 
「じゃあさ じゃあさ とりあえず絵を描こうよ。美術部だし」

そこらへんにあった紙と鉛筆を優が皆に向かって差し出す。

「そうだね、そうしよう!よし!二人とも!座った座った!!」

恵が二人の背中を押して席に座らせ、優は紙と鉛筆を二人に渡した。

「えっ、えっと、絵を描くと言っても僕達全然描けないよっ それに何を描いたら…」

突然の事で慌てるウィルは自信無さそうに机の上にある真っ白な紙を見つめていた。

「大丈夫、大丈夫、好きなものを描けば良いんだし、何でも良いさ!ほら、ギルくんは早速何か描いてるよ」
拓海がギルを指差す。

「えっ!?」

ウィルはパッとギルの方を見ると彼は一生懸命何かを描いていた。
そしてまた視点を紙の方にやり、どうするか考え始めた。

「んー、うさぎとか描いてみたらどう?」

「う、うさぎ?」

「まあ、可愛らしいもの思い付くね、かすみん。どう?うさぎ、描ける?」

(うさぎかあ、どんな感じだったっけ…うさぎなんて初めて描くよ…)

ウィルは記憶をたどりながら、鉛筆を走らせる。
二人が描き終わるまで皆はおしゃべりをしていた。
 
「…で、出来た…」

「おお!出来たんだね、ウィルくん!どれどれ」

霞が覗き込んでウィルの絵を見た。それについで皆も覗き込んだ。

「かわいい!とてもかわいいうさぎだね!」

「初めてにしちゃあよく描けてるよ」

「ほ、ホント?…」

皆に褒められ少し頬がピンクに染まった。

「俺も出来たぞー!」

するとギルが紙を上にやってアピールしている。

「おお、見せてくれ」

伊崎が先にギルの元へ見に行った。

「おお!…おーお?何の絵だ?」

ギルの絵を見た伊崎は複雑な顔をした。その様子を見た卓弥が近寄ってギルの絵を見る。

「どうしたの…ちー…さん、わーすごいねこれ、何の絵?」

卓弥は伊崎とは逆に笑顔で質問した。

「俺にも分かんねっ」

「分からんのかいっ」

漫才のように拓海がつっこむ。

「んー何とも言えない絵だねーこれ」

「判別不可ですな」

「ねえねえ、慎ちゃんも見てよー」

優が壁にもたれかかっている藤崎を手招く。呼ばれた藤崎は面倒くさそうに近寄って来た。

「ああー…そうだな、ホント何とも言えないが、ある意味才能あるかもな」

ちゃんと真面目に答えているのか分からなかった。

「わー、才能あるって!すごいねギルくん!」

「マジか!」

嬉しそうにしているギルを横目にウィルはギルの絵を見ていた。

(…才能、ねえ…)

こいつに才能というものなんてあっただろうか、という顔だった。

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