09
【Write:ソラさん】
誰ともなく指摘された藤崎は、誤魔化すように小さく咳払いをした。
そして何事もなかったの如く、藤崎はウィリアムたち、主にギルバートに微笑を向ける。
「間違いは誰にでもあることだ。俺だって今日初めて間違われたわけじゃない。気にしなくていい」
「何回も間違われてきたんだな……」
僅かな哀れみが含まれた千尋の呟きは華麗にスルーして、藤崎は何かを含んだ目でギルを見上げた。
一方で、ギルは不思議そうな顔で藤崎を見下ろす。
(……本当に高校生なのか?)
(……本当に先生なのか?)
同じ事を考えているとは知るよしもない二人の側で、千尋と霞が盛大に吹き出した。
腹をおさえ、げらげらと笑いだす。
「ふっはははは! ど、どっちが先生で生徒かわかんねぇ!!」
「ね、年齢と身長の反比例……!」
「ちょっとちーさん! かすみん!」
藤崎が二人を鋭く睨むと、すかさず卓弥が咎める声を飛ばした。
恵と拓海が、うずくまって爆笑する二人をなだめようと慌てるのを横目に、藤崎はウィルとギルに再び向き合う。
「悪いな。うちの部は大体こんな感じで騒がしいんだ。……想像と違ったか?」
「そ、そんなっ! ……すごく、楽しそうだと思います」
藤崎の言葉に、ウィルはぶんぶんと首を横に振って否定した。
そして視線をやや落とし、ぽつりと呟く。
「…………皆、仲がいいんですね」
その声音には、絡まる糸のように複雑な感情が滲んでいた。
声をかけようと藤崎が口を開いた瞬間、今まで黙って傍観していた優が間に入り込んできた。
「はーいアイコンタクト終了ー。アイコンタクト3秒で恋は始まるんだよ! 慎ちゃん浮気したらダメでしょ」
「何が浮気だ」
優は、不意についていけずに目を白黒させるウィルへと目をやる。
「っていうか、さ。ウィルくんもギルくんも、ボクたちと仲良しでしょ? 『友達』なんだから」
「そうだよ。仲良しこよしランデブーだよ」
「意味わかんねぇよ霞」
優に次いで、霞が無邪気な笑顔を向けた。
意外な反応だったのか、ウィルはぱちくりと目を瞬かせる。
そんな彼の頭を、ギルは黙ってくしゃりと撫でた。
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