2023/09/15(Fri)
「いつのひか喪失はうしなはれるだろう」海賊
 ifパラレル/公式では南だがどこかの情報で北出身と聞いたことからの幼少期であっていたらの話。
 「別に。俺も食料が欲しかったから」
そう言って一回り大きい男はドフラミンゴにパンを幾つか投げ渡し、氷の腕を地面から離した。興味なさそうな態度の反面、瞳の奥に兄弟を気遣う色が見える。地上に墜とされてから初めての行為だった。当時のドフラミンゴは不器用に差し出された其れに、手を伸ばす余裕はなく寧ろプライドが傷つけられたのをよく覚えている。暫くの間男とは食料を漁る度にであった。何度か追い立ててくる人間から助けてくれることもあった。どうしてそんなことをするのか。奉仕されるべき神の血筋だから当然という気持ちと、弱さを浮き彫りにされ、憐れまれているのかと憤った。しかし、男は怒るでもなく「助けたつもりはない」と宣った。挙句、ドフラミンゴが偶々そう思っているだけであると。「…誰かを救うなってことは、俺の柄じゃないし。んな力、ないよ」煤けた顔に浮かぶ表情は彼が心底そう思っていると。「ただ……そう、なれたら…いいなぁ」微かに口元を和らげた瞬間を、きっとドフラミンゴはこの先一生覚えているのだろうと思った。

そんな男は白を纏い、いつかの言葉を体現している。やっと七武海という地位まで乗り上げた。交わした言葉に覚えているのは己のみということに、思った以上にダメージを受けた。ポッカリと失われてしまった温度。しかし、ならばその喪失は別のもので埋めれば良い。都合よく最上の者がいるのならば、尚更に。海賊とは欲しいものはどんな手を使ってでも、獲りにいくものだから。それまでにはこのいたみなど等に無かったことになるだろう。
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