2022/12/31(Sat)
「花咲くようにはいかないもので」海賊(赤青)
 毎日水をやった所で、上手く育つとはいかないもので。幾度目かのため息をついて頬杖を付く。クザンは目の前の真っ白な紙を前に思案していた。先程からピクリとも動いてくれないペン先は渇き始めている。拝啓…なんて始めるのはクザンの柄でもないし、送る相手にもそんな堅苦しい書き始めを送りたい訳でもない。そも、手紙を書こうなどと言う事柄自体が普段からして考えられないだろうなと、また溜息をつく。何故手紙を書こうとしたか。理由はただ一つ、あまりにも鈍い頑固でクソ真面目な同僚へ思い知らせてしまいたいからだ。いつからと言われたら小っ恥ずかしいが、クザンがまだ訓練兵時代の頃。自覚したのは数年前だが、無自覚にずっとあの背中を追っていた。それでも今まで異性が恋愛対象であり、先輩から同僚となったあの男に惚れた事をすんなりと受け入れれた訳ではない。悩んで、いっとき徹底的に避けた時期もあるが、本部半壊始末者を提出したとだけ言えばお分かりだろう。その時のすったもんだでクザンも漸く観念した。想っているだけでなんて殊勝な性格をしていないクザンは、吹っ切れた日からアプローチをした。掲げる正義が反対な為ぶつかる事も多いが、腹が立っても言い返すのを我慢して、なるべく会話をする様にもしたし、食事にだって2人で行った。あのボルサリーノにだって恥を忍んで協力してもらっても気付かない鈍ちんである。「…はぁー…。やっぱ、脈なしか?」いや、そんな事はないはず。手を握っても抱きついても、あからさまに女性との会話に割り込んでも、家に行きなり訪ねて同じ布団に入っても拒絶は無かった。「流石に襲うのはなぁ。…面と向かって思い知らされるのは、しんどいし」だからこその手紙なのだけれど、手が止まる。余りにも馬鹿馬鹿しい言葉しか出てこなくて。ゴミ箱の中に幾つも捨てた書き損じにも同じ言葉が連なっている。「ガキじゃねぇんだから…もっとまともな言い回し思いつけよ」たったふた文字の余りに赤裸々な言葉に、途方にくれた。


「でぇ?いつ、君はクザンに返事してやるのぉ~?」「何のことじゃ」素知らぬフリをしながら、ボルサリーノの言葉を受け、微かに笑う男は嫌に様になっている。元後輩兼、現同僚に男の趣味が悪いと忠告してやるべきだが…。同じくらいこの同期の男が嬉しそうにクザンを見ている穏やかな姿が好きなので、ただ黙って2人を見守ることにした。
直接的な言葉を聞きたいがために、あの積極的なアプローチを交わし続ける男の忍耐と根気良さに若干の呆れもしながら。
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