2022/12/11(Sun)
「経験はしかし所詮過去でしかないのです」海賊(紅鶴×青)
※平和時空/紅鶴→(←)青
 何でも起こる偉大な海であっても、目にしたとして信じられない現実は起こる。正確に言えば受け入れたく無い現実だ。その日は全く付いていなかった。度重なる不運続きに、予想外の時化で糸を駆使して帰ることも出来なくなったドフラミンゴは現在荒屋で海軍の最高戦力たる1人…青雉と共に肩を寄せ合っていた。外は豪雨が滝と見紛える程の勢いで、雨を凌ぐ為に近くの島に降り立ったら、見慣れた自転車が同じ様に浜へ着いたのが見えたのだ。曰く、"散歩"だとの事だがマリンフォードから数時間も離れた距離にある島に散歩はない。海に落ちたと言っても遜色ない濡れ具合に、服は脱ぐしか無かった。幸い荒屋には暖炉があり、家中ひっくり返して火を焚いた。止む気配がない雨と、段々下がる気温に体温を保つ為、下着以外は脱いだ大男2人身を寄せ合った現在。暖炉の前に比較的綺麗な毛布を敷いて、その上にクザンを抱える様にしてドフラミンゴは座っていた。クザンは周りよりも大柄な男だが、ドフラミンゴはそれより大きかった。「お姉ちゃんなら大歓迎なんだけどよぉ…」「贅沢言ってんじゃねぇ」渋々な声音に、いつもの様に軽口を叩く余裕がなかった。何がどうして突然片想いの相手と肌を触れ合わせる事態になるだよ。ティーンじゃねぇぞと己を脳内でぶっ叩くが、心臓は忙しないままだった。腕の中に収めた体は、軍人らしく引き締まっているが全体的に薄いと感じさせる。特徴的な癖っ毛は水分を含んで落ち着いており、左側へ纏めている。その為、いつもは見えない頸がドフラミンゴの目の前に晒されていた。細い、し髪から垂れる水滴が首筋を辿る様が艶かしくて口内に唾液が溜まる。「…かんべんしろよ」「いや、俺のセリフなんだけど」「ちげぇ、くそ、いいから黙ってろ」「お前が喋ったんだろ、…っ」ひくり、クザンの肩が跳ねて不自然な箇所で言葉が途切れた。その理由に心当たりがありすぎるドフラミンゴは、意味もなく否定の言葉しか吐けない。が、…「…ぇ、…ぅ、あ、…った、てん、だ…けど」と、戸惑った声と後ろからでもわかる耳から首筋まで真っ赤に染まった姿に固まる。え、…これは、え…そうだよな??は?脳内は間抜けな意味もない言葉で埋め尽くされた。「く、くざん」「なに…よ」「あ~~…、。き、キスしても…いいか」スリッと後ろから顔を擦り寄せ、その耳元に言葉を吐き出す。今までに女にも男にも甘ったるく囁いてきたのに、ドフラミンゴの声はみっともなく震えていた。どくどくと煩く鳴り響く自身の鼓動は、抱きしめているクザンには丸聞こえだろう。ドフラミンゴよりも細い肢体からも、同じ鼓動が、同じリズムで鳴っていた。
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