2022/11/11(Fri)
ある恋のおはなし(海賊)紅鶴×青
(オメガバース)
香りが、した。
いつも通り、出席率の最悪な七武海会議に呼び出され偶々今日は隣の席が海軍大将青雉だった。相変わらず遅刻してきたそいつは扉から一番近い、ドフラミンゴの隣に座って来た。いつもの席も空いているのにと疑問に思い横目で伺うと、顔色が良くない。多分、歩くのも億劫なのか熱のこもった息をゆっくりと吐き出していた。その息と共にふわり、ドフラミンゴの鼻に香りが漂ってきた。甘い、あまい、脳味噌を溶かす様な香り。口の中に唾液が溢れ出て来て、胃袋が音を立てて鳴いている。昼飯は用意されたものをついさっき食べたばかりだと言うのに、目の前の獲物を食べろと身体が、本能が唸り声を上げる。
「?…な、に。」
いつまでも外さない視線に焦れたのか鬱陶しか思ったのかクザンが此方に声をかけてきた。眠そうな目元が少し赤いだとか、熱い唇の奥に覗く赤い舌だとか、とにかくドフラミンゴの目に媚びりつく。
「おい、……ドフラミンゴ?」
名前を呼ばれた瞬間、心臓が音を立てて唸り声を上げた。頭の中で制止する声も振り切るが、それは本当に頭の中だっただろうか?些細な事かと目の前の青に手を伸ばし、ドフラミンゴの顔に掌を翳す腕を、手首を掴んで退かせると共に逃さないようにぎちりと力を込める。
「何、やってんだ!クソ、はなっ…!」
「じっとしてろ」
「は、…っゃ、…ッ、!?」
素早く抱え込みクザンの頭を自身の肩口へ抑えて首元に唇をくっつける。ひくりと跳ねるドフラミンゴよりも細い身体に腹の奥から益々熱が湧き上がった。邪魔な髪の毛を纏めてのかし、頸を晒す。血色の悪い肌に、浮かぶ汗をひとなめしてから、そこに勢いよく噛み付いた。
「ぃ!?ッ、あああぁあっ…ァ"!!!!」
普段は低いテノールの声が甲高く悲鳴を上げると、微かに掠れてセクシーに聞こえる。ドフラミンゴはより声を上げさせたくなり、暴れ回る身体を押さえつけて、それでもまだ足りずに今度は強く吸い付く。痛みに震えていた身体は直ぐに力をなくし、代わりに小さく痙攣を繰り返し始めた。ドフラミンゴの腕を掴む手にも力が入っていない。周りの騒ぐ声と、荒い息を吐く腕の中の肢体にドフラミンゴの理性が少しづつ戻る。そこまでして漸く気づいた。
「…ーおま、え…Ωか。」
口を離し、血が出ている頸を確認の為に舐めてみる。ふわりと溢れ出てくるフェロモンの香りは、恐ろしく甘美であった。もっと味わいたいと思う自身にドフラミンゴはゾッとした。今日に至るまでドフラミンゴはどんなΩからの誘惑にもフェロモンにも我を失ったことはなかった。なのにこの為体はなんだ。歳上の、ましてや海軍大将をこの総本山のど真ん中で、後先考えずに番にしてしまった。
「……そ、ぅだよ。だから、はなしやがれって。」
肩口から顔を上げ、上目遣いで見上げる顔は理性を必死にかき集めて睨みつけていたが、番の腕の中で本能は安堵と欲を溢れさせその顔は溶けていた。ぉあ…、なんて間抜けな声を上げながらドフラミンゴは己のファーコートを脱ぎクザンの頭からすっぽりと被せ、周りからその顔を隠す事が精一杯だった。
(想定外のはじまり)
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