2022/11/27(Sun)
「曖昧なままほっておいてくれて」海賊(紅鶴×青)
 気付いた時には棲みついていた。その事実にドフラミンゴは唖然としてしまった。最初はゲームのつもりだった…眠そうな顔をして間抜けな面をしていても、腹の底をみせない男。そいつが目元を赤くして項垂れていた姿に面白そうだと悪癖が働いた。氷の男と言えど体温があり、涙など想像も付かない姿を海賊の己が流させれたらどう面を歪めてくれるのか。手を伸ばして、優しい耳障りのいい言葉を吐き出せば「舐めてんのか海の屑鳥」と、今までに無い罵倒と拒絶を頂いた。数回はそのやり取りが続いた。何度も続けば元来我慢強いタチでは無いドフラミンゴは、真っ向から正論と鬱憤を込め叩き潰した。遊ぶ前に終わったなと、別の遊びを見た様と考えだした時、分厚い氷にパキリッと隙間が出来た。「ふ、確かに」そう言って自嘲した。何とも言い難い感情が吹き荒れて、サングラスの下で瞬きを繰り返す。普段であれば畳み掛ける嘲笑と笑いは喉奥に引っかかって1鳴きも出なかった。次、次に会った時にと逃げる様に踵を返したのを覚えている。少しづつ、一歩、一歩と氷の奥へと手を伸ばし、初めて何の含みも持たない破顔を見た。見てしまった時から、遊びだなんて言えなくなってしまった。「お前、意外とかわいいやつだな」「…たかが数年歳とってるだけで年上ヅラすんじゃねぇよ」「いや、そういうとこ」他の奴らよりフワフワと柔らかな雰囲気を、大将としてではなく、クザンとして話す姿に胸が締め付けられる。自身の抱えるモノの正体を知っている。知っているが、答えとして明確にしてしまうにはあらゆる身の周りが、立場が邪魔をする。溢れ出そうな其れに蓋をするしかなかった。手を伸ばせば直ぐそこに、欲しいものがあるのに。今のドフラミンゴにとってその距離は途方もなく遠く険しい距離だった。
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