丸井君と付き合ってから一番最初に知った事は、甘いものが大好きで休みの日によく自分でお菓子を作るということだ。

よく授業中でもガムを噛んでいるし、休み時間になると女子のようにお菓子を広げて食べていたから甘党なのかなとは予想していたけど、まさか自分で作るほどだとは思わなかった。しかも写メで丸井君特製ケーキを見たけどプロ並の上手さでびっくりした。よく歳の離れた弟のために作ってあげるらしい。丸井君、将来いい主夫になれるよ。そうやって本人に言ったら「ばーか、お前も料理しねえと嫁に貰ってやんねーからな」なんて言い出すからついつい頬が緩んでしまった。

「ニヤニヤしてんなよ」


『し、してないし!』


「ニヤけ堪えるの必死なくせによく言うぜぃ」


『どうせ気持ち悪い顔してましたよー』


もう、丸井君の意地悪!別にそんな事言わなくてもいいじゃない。それに私をニヤけさせるような事を言ったのは丸井君なんだし。つーんとそっぽを向いていると、丸井君はいきなり私の頬っぺたをむにゅっと摘んだ。


『にゃにしゅんのひょ!(なにすんのよ!)』


頬っぺやわらけ〜と言いながら爆笑する丸井君。もう、ほんとなんなの!


「まあお前が料理出来なくても俺が貰ってやるから心配すんなよぃ!」

そういって丸井君は触れるだけのキスをした。

『!(フ、ファーストキス!!)』

「好きだよ」


もう、わざと怒らせといて一気に甘い言葉を囁くんだから。丸井君は意外に意地悪だ。でもそんな彼に一気に惹かれていったのは紛れも無いこの私なんだけど。



それから丸井君は私の言葉をなまえと呼び、私も丸井君の事をブン太と呼ぶようになった。ブン太を知れば知るほど好きが大きくなる。今では好きを通り越して、愛おしいのほうが強いのかもしれない。そんなブン太と将来のことをほのめかす会話が出来て、私は純粋に嬉しかった。

当時の私は永遠という言葉を簡単に信じられた。きっとそういられたのも、私とブン太がまだ幼かったから。